以前、当ブログにて住宅に関する福利厚生として役員や従業員に貸与する社宅制度についてご紹介いたしました。
今回は、社宅制度とは別の住宅に関する福利厚生としてう住宅手当についてお伝えいたします。
1.住宅手当とは
従業員等に対して住宅費(住居費)を補助するため給料の諸手当として支給される金銭をいいます。
なお、住宅手当を支給する場合には、賃金規定に記載しておいた方が望ましいです。
2.税務上の取り扱い
(1)法人税法上の取り扱い
役員と従業員とで扱いが異なります。
・役員 … 役員報酬に「手当」という考え方はありません。
役員報酬額と別に「住宅手当」を支払った結果、定期同額給与の要件を満たさなけ
れば増額分は損金不算入となります。
・従業員 … 全額事業経費として、損金に算入できます。
(2)所得税法上の取り扱い
給料の諸手当として支給されますので、全額「給与所得」として課税されます。
(3)消費税法上の取扱い
「給与」に該当する為、不課税となります。
3.住宅手当の算定方法
税務上は特に決まった計算方法というのはありませんが、労働基準法上の注意が必要です。
通常は、割増賃金(残業代等)の計算に住宅手当を含める必要があります。
しかし、労働基準法所の要件を満たした場合のみにおいてその計算に含めなくてすむ制度があります。(労働基準法施行規則第21条)
【「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できる住宅手当の要件】
・住宅に要する費用に応じて算定される費用をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこと。
・住宅に要する費用とは、 賃貸住宅については、居住に必要な住宅(これに付随する設備等を含む)の賃貸のために必要な費用。
持家については、居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用をいうものであること。
・費用に応じた算定とは、費用に定率を乗じた額とすること(下記(1)-①)や、費用を段階的に区分し費用が増えるに従って額を多くすること(下記(1)-②)をいうものであること。
【参考例:要件を満たす場合の住宅手当の計算方法】
(1)住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するとされているもの
例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給することとされているもの。
(2)住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くして支給することとされているもの
例えば、家賃月額5~10万円の者…2万円を支給、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
また、「割増賃金の計算」から除外しなくても良い場合には、下記のような計算方法があります。
・住宅の形態ごとに一律に定額支給される方法
例えば、賃貸住宅居住者は○○万円、持家居住者は△△万円
・住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給される方法
例えば、扶養家族がいる場合○万円、いない場合△万円
・全員一律に定額で支給される方法