【ロシア文学の深みを覗く】
第32回:『いい香のする名前』
今回紹介する本は、盛林堂ミステリアス文庫の『いい香のする名前―ソログープ童話集―』です。
盛林堂ミステリアス文庫を知っていますか? 知っていたらかなりのマニアかもしれません。
盛林堂は西荻窪にある古本屋。店内は広くて清潔感があって、文学系の品揃えも豊富で個人的に好きな古本屋です。といっても数回ぐらいしか行ったことはないのですが・・
そんな盛林堂は、今年から盛林堂ミステリアス文庫という文庫シリーズを出版しています。このシリーズは今のところ明治大正時代の本の復刻がメインで、旧仮名遣いや旧漢字をそのまま使っています。
本書は以下のURLに注文方法が記載されています。ただ、限定200部ですので、まだ手に入るかどうかは分かりませんが、興味ある方は早めに注文してみましょう。
http://d.hatena.ne.jp/seirindou_syobou/20130815/1376558307
さて本書には9篇収録されています。副題は童話集なのですが、童話っぽいのは最初の2篇だけで、他は幻想小説といった感じですね。
表題作の「いい香のする名前」は童話。名前を言うだけでいい香がしてくる天使が神の命令に逆らったために人間として生活することになるという物語。童話の王道路線的な話です。
個人的に最も興味が惹かれたのは本書の中で一番長い「地のものは地へ」。ソログープは子供の世界というものを愛している反面、大人の日常生活を極度に嫌っています。本作は、子供から大人になる過渡期の少年を描いたものですが、それはソログープにとっては絶望的なこと。ペシミズムに彩られたソログープの作品の中でも最も暗い部類に入ると思います。
まあ、癖のある本ですが、興味のある方はお早めに。
次回はゴーリキーの予定です。