アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語(研究社):オラウダ・イクイアーノ | 夜の旅と朝の夢

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[第5巻 マイノリティ]アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語 (【英国十八世紀文学叢書】)/研究社

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【18世紀イギリス文学を読む】
第10回:『アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語』

今回は研究社の英国十八世紀文学叢書の中から『アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語』を紹介します。

さて、18世紀のイギリスといえば、奴隷貿易が最も盛んだった時期です。アフリカの王族などに武器などを提供する代わりに、黒人を得て、西インド諸島などで奴隷として売却する。

本書は、そんな奴隷としての生活を強いられたオラウダ・イクイアーノ(1745頃-97)という黒人男性の自伝です。

イクイアーノのアフリカでの名前はグスタヴス・ヴァッサ。部族からはぐれたところを他の部族の人間に捕まり、イギリス人へと売却されてしまう。

イクイアーノは主に船上で労働を強いられたが、比較的理解のある主人と仲間から読み書きやキリスト教の教義などを学び、洗礼も受ける。そんな他の奴隷と比べれば良い境遇にいたイクイアーノであったが、些細な誤解が元で他の人に売られてしまう。その後、様々な人の手に渡り、結局、西インド諸島に連れて行かれることに。

しかし、そこでもイクイアーノは奴隷としては破格とも思える生活を送ることができた。そして、貿易船に自分が仕入れた物を載せそれを別の場所で売るなどして、金を稼ぎ、ついには自身のお金で自由を買い戻す。

だが、自由を得たといっても黒人には何の権利もない。金銭や物を盗まれようが、殴られようがそれを訴える手段は全くないのだ。そんな世界でイクイアーノはどのように生きて何を考えたのか・・・

とまあそんな話ですね。本書の帯には自伝文学の傑作にして、のちの奴隷文学の原型などと書かれています。奴隷文学については、ほとんど無知に等しいため、後世への影響などはよく分かりませんが、波乱万丈で感動的でもある本書は、自伝文学の傑作という点については間違いないでしょう。

奴隷貿易や奴隷制度に対する様々な考え方、黒人に対する態度や振る舞いの千差万別さなどなど、当時の風俗などを知る上でも価値ある本です。

うん、買い手があまりいなさそうな本なだけに、多少大げさに称賛しよう、絶対に読むべしと。


メモ:英国十八世紀文学叢書
第1巻『パミラ、あるいは淑徳の報い』
第2巻『ガリヴァー旅行記』
第3巻『ペストの記憶』
第4巻『オトラント城/崇高と美の起源』
第5巻『アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語』★
第6巻『エロチカ・アンソロジー』
★:既刊(3/6現在)