ポポイ(新潮文庫):倉橋由美子 | 夜の旅と朝の夢

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ポポイ (新潮文庫)/新潮社

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今回紹介する本は、倉橋由美子(1935-2005)の小説『ポポイ』です。

倉橋由美子は個人的にはかなり好きな小説家で、このブログでも以前、『反悲劇』という小説を取り上げたことがあります。

本書は俗に「桂子さんシリーズ」と呼ばれているシリーズの中の一冊です。「桂子さんシリーズ」は、倉橋由美子のライフワーク的な作品で、桂子さんという女性が登場する小説群のことです。

ただシリーズといっても(私も全部は読んでいないので断定はできませんが)、各作品のつながりは薄く、どの作品から読んでも多分問題ないはずです。主人公も桂子さんに限らず、桂子さんの親族だったりもします。

本書も桂子さんの親族が主人公の話で、本書に関して言えば、他の作品を読んでいなくても、全然問題ありません。

本書の主人公は、桂子さんの連れ合いで大物政治家でもあるお祖父様の孫娘の舞です。そんな舞には婚約者である脳学者の佐伯さんという人がいて、その佐伯さんから突然「生首を預かってもらえないか(P5)」と言われます。

この生首というのは、少し前にお祖父様の家に押し入り、三島由紀夫のように割腹自殺をして介錯されて胴体と分かれた少年もの。生首には、人工血液供給システムが付いていて、なんと生きているのです。とはいえ、眠っている状態でコミュニケーションはとれません。

一方、お祖父様は事件後脳卒中で倒れていて、少年との間に何があったのか不明。そんな中、佐伯さんは舞に生首の世話を任せることにしたのであった。

舞は生首の世話を承諾すると、その生首にポポイという名前を付ける。世話の甲斐あって意識を取り戻したポポイと舞との奇妙な交流が始まり………。

とまあ、そんな感じの話です。ちなみに「ポポイ」とは、古代ギリシャ語の感嘆詞で「ああ」とか「おお」とかの意味らしいです。

130頁ほどの中編の割には読みごたえもありますし、舞の少し飛んだ性格なども読んでいて楽しいです。わりとおすすめなので、絶版みたいですが、古本屋などで見つけたら手にとってみてください。

あ、そうそう。完全に蛇足ですが、僕は音楽を聴きながら本を読むことがあります。ボーカルが入ると気が散るので、基本的にはジャズやクラシックのインストゥルメンタルなんですけど。

で本書を読みながら、ふとグレン・グールドというクラシックのピアニストの演奏が聞きたくなったのでCDをかけていたら、なんと本書にグレン・グールドの名前が出てきてビックリしました。グレン・グールドを聴くのは久しぶりだったので、なおさらでした。

単なる偶然なのか、心理学者ユングのいうところのシンクロニシティなのか、それとも、本書にはグレン・グールドのピアノと通底する美が存在するのか?

なんて思ったりしましたが、まあ、単なる偶然が妥当な線でしょう。個人的には最後の説を取りたいんですけどね。

ちなみに聴いていたCDはこれ。
バッハ:平均律クラヴィーア曲集/ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

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