額に脂汗を滲ませながら悶絶の夜を過ごした。
明け方、仕事に遅刻する夢を見る。
ヘルメットを取りに戻っている間に、玄関前に置いていたバイクが盗まれて、出掛けようにも出掛けられないという夢だった。
バイクにも乗らないのに。
でも目覚めた時には、あの逃げ場のない痛みから解放されていて安堵。
しばらく暴飲暴食は控えよう。
朝の散歩から帰宅すると、玄関に見慣れない靴が2足。
タイの彼女2人がカオニャオマムアンを手土産に遊びに来ていたのだ。
台所に行くと父がコーヒーを淹れようと悪戦苦闘中。ヤカンでお湯を沸かすことしか出来ない男がなんと無謀な。
でも、客人をもてなしたいという父の気遣いだったのだろう。
胃痛に効きそうな苦いコーヒーはオレがすすり、2人にはりんごジュースをお出しする。
それから交流タイムスタート。
ケータイや辞書を駆使しながら会話を進めるのは以前と同様だが、彼女らの日本語力が半年前とは比べ物にならないため、スムーズにやりとりは進んだ。
驚くべきことに、ガンちゃんはタイに自分の車を持っているそう。
現地工場で生産、販売をしている日産の「シルフィ 」というセダンで、今はガレージに入れっぱなしだが、帰ったら乗り回すのが楽しみなんだって。
お父さんは大規模なバナナ農園を展開している農場主で、ケータイに保存されている自宅写真にはガンちゃんの車の他にも高級車がずらりと並んでいた。
一家を養うために単身日本へ...のようなイメージが拭えなかったが、どうやら外国人労働者への認識を改めねばならないようだ。
ニュースでは劣悪な条件での労働を余儀なくされている外国人の姿が取り上げられているが、少なくとも彼女たちが働いている工場では、工場長の誕生日に手作りのパーティを開いたり、時には外食に連れて行ってもらったりすることもあるそうで、良好な関係が築かれていることが伺える。
なんだかこちらまでほっこりした気持ちになった。
お茶請けに、届けて下さったカオニャオマムアンをいただく。
前回は惨憺たる出来だったので、今回はミント葉も用意して盛り付けに気を配った。
日本人にはあまり馴染みのない組み合わせだが、見た目にも華やかで前回より美味しく感じた。
盛り付け重要説。
前回これだから。
彼女たちが席を立つと、父は慌てて台所へ。
冷蔵庫に袋入りのチョコレートがあったそうだが、誰かが食べてしまったのか一向に見当たらない。
窮した父は、
「これでいいや」
と、昼食準備を始めていた妻から10個入りの卵パックをひったくり、彼女たちに、
「これ持って帰れ」
と手渡していた。
カオニャオマムアンのお礼というか、遊びに来てくれたお礼というか、手ぶらで帰らせたくなかったのだろうが、よりにもよってスーパーの卵とは(笑
笑顔で彼女らを見送り、ささやかな国際交流は終了。
その直後、和やかな空気を切り裂く妻の危険発言が炸裂する。
「おい、じいさん。今日の昼飯抜きだぞ!」



