本格小説(上) 水村美苗 p292
“祐介に接する女の態度は最初の印象からは想像もつかないほど親しげなものとなっていた。二人の間で偶然生まれた親和感が、その後の成り行きのなかで自然に深くなっていっていたのに加えて、朝早くからあの男の不在があった。男の不在は二人の間の親和感をさらに深め、どこかで共犯関係のようなところまでもっていく働きをした”
祐介が土屋冨美子の家でしばし厄介になっている場面。
結局その日は、祐介は冨美子の家に泊まっていくこととなった。別の部屋に東太郎という男がおり、一緒に酒を飲む展開になる。東太郎と冨美子との関係はまだここでは明かされてはいない。
翌朝、起きると冨美子が朝ごはんを用意してくれていた。東太郎はゴルフに行ったということで不在だった。
“男の不在は二人の間の親和感をさらに深め、どこかで共犯関係のようなところまでもっていく働きをした”という心の動きは、私にはよくあります。しかし、それを活字にして表現したことがありませんでした。
小説を読むと、自分の中の漠然とした感情が活字となって表現されていることがあるので、とても勉強になります。