豊饒の海(一)春の雪 三島由紀夫 p38
“こうして聡子は、清顕の心のコップの透明な水の中へ一滴の墨汁をしたたらす”
聡子は清顕に急な質問を投げかけます。
「私がもし急にいなくなってしまったとしたら、清様、どうなさる?」
清顕は冷静を装いながらも、訊き返さずにはいられません。
「いなくなるってどうして?」
そこに狙いを済ましたように聡子は言います。
「申し上げられないわ、そのわけは」
付箋部は、こう言われた後の清顕の心の不安が表現されています。
清顕は、気になる存在である聡子がいなくなるかも知れないと聞いて不安なのです。しかし、プライドがあるのでそれを相手に悟られたくありません。
聡子はそれを知っていて、わざとこのようにして清顕を翻弄するのです。
相手の一言で、心に不安が発生する様子を巧く比喩表現していると思ったので、付箋を貼りました。