仮面の告白  三島由紀夫  p65
“彼は私を心ゆくまでなぶりものにするつもりか、私の敗北が早すぎないように、故ら力を加減している様子が見てとれた”

主人公の「私」が中学二年の頃、ある遊びが二年生の間で流行りました。それは、校舎わきにある遊動円木の上に乗って、墜落させ合うという遊びでした。
近江という「私」の友達は、その遊びが得意で、誰も敵うものはいませんでした。
その近江に「私」も挑みました。当時まだ貧弱だった「私」は、当然敵うはずがなく、遊動円木の上で弄ばれてしまいます。

付箋を貼ったとこは、その時の様子を描写した一部です。
特に目に止まった所は、“私の敗北が早すぎないように”です。
私のこれまでの「敗北」という単語の使い方は、文の中間より後に来ることがほとんどでした。例えば、「こんな奴に敗北するとは」「気持ちのいい敗北だった」「完全なる敗北」などです。
しかし「私の敗北が早すぎないように」は、敗北という単語が先の方にきています。私なら恐らく、「私が早すぎる敗北をしないように」か、そもそも敗北という単語を使わず、「私を早く負かさないように」としていたと思います。

一つの語を置き換えるだけで非常に印象が違い、置き所次第では読み手の目を引く結果になるところが興味深かったので、付箋を貼りました。