切り返す前までの、後へ後へ避けていく動きとは逆に、
前へ前へと、橙に近づくように光弾を避ける咲夜。
橙は陣を維持するのに手が一杯で、その場を動けない。
再び間合いを詰める咲夜。
「やっぱりね。貴方は、弾幕を展開すると動きが鈍くなる。
逃げられないのは私じゃない、貴方の方よ!」
ナイフを構えなおし、改めて橙を捉えにかかる。
しかし、接近戦にこだわり過ぎた事が、ここに来てあだとなる。
「う…う~ん…しょうがない、鬼神:飛翔毘沙門天!!」
「!!」
橙の身体が、咲夜の視界から完全に消え去る。
今までとは比べ物にならないほど、その動きが早い。
しかも、橙の走った軌跡には、高密度の楔弾が残されている。
咲夜の周囲を回るように駆け抜ける橙。
咲夜は一瞬で光弾の檻に閉じ込められてしまう。
「ちょっと、いくらなんでも、これじゃ…」
「アリス、さっきから彼女の心配ばかりしているけど、
大丈夫よ。あの娘は、下手な妖怪なんかより、よっぽど強い。
さっき、彼女自身も言っていたでしょう?
吸血鬼にも、全く物怖じしない人間よ?
これくらい、あの娘の手にかかれば、それほど大きな問題じゃない。」
「思い出してみると、解り易いぜ。化猫は何枚もカードを切っている。
対して、咲夜はまだ、1枚もカードを切っていない。
詐欺臭い特殊能力は、幾分か使ってるみたいだがな。」
「言われて見れば…。もしかして、貴方達…」
「ええ、やりあった仲よ。今まででも屈指の激戦だったわね。」
「なるほどね。安心して見ていられるわけだわ。
それなら2人とも、そのカードを固く握った手を緩めて、
リラックスして見ていれば良いじゃない。矛盾しているわよ?」
「保険は、かけてこその保険だぜ。」
「…ま、一理あるわね。」