春を探すとは言ってみたものの、
そんな春が簡単に見つかるはずも無く、
庭の掃除をしながら溜め息をつく少女。
「はあ…もうこの辺りの春はからっきしだし…。
他に、こんな所まで、春を持ってくる誰かなんているかな…。」
「来るわよ、もうじき。」
「うわ…脅かさないで下さいよ…見つかったかと思いました…。」
「ふふ…掃除は、貴方の立派な仕事じゃない。
そんなに怖がること無いでしょう?」
「今は、掃除よりも春探しなんです。」
「確かに。そんな雰囲気ね…。」
「…本当に、あの桜は満開になるのでしょうか?」
「あら、自分の主が信じられなくなってきた? これは由々しき事態ね。」
「いえ、決してそんなつもりは…。けど…」
「けど?」
「私の師匠は、あの桜が満開になることは2度と無いし、
2度とあってはならない、と…。」
「それは、自然には、という事よ。
普通にやってくる春では、満開になれるはずが無い。
そんな春が、何の助力も無くおとずれるなんて、どう考えても異常。
そんな異常は、あってはならないことでしょう?」
「確かに、そうなんですが…それだけとも思えなくて…。」
節目がちになる少女。その目からは、自信が消え去りそうになっている。
「今は主を信じなさい。それが、貴方の務めよ。」
「はい…。」
「大丈夫よ。ああ見えて、やる事はやっているから。
それは、貴方が1番よく解っている事でしょう?」
「そうですね…。あ、申し訳ありません、こんな事を口にしてしまい…」
「本当ね。」
「申し訳ありません…。」
「ふふ…かわいいわね。嘘よ、気にしなくて良いわ。
そんな事を気にするより、しっかり務めてあげて。」
「はい…もう1度、しっかり春を見直してみます。」
掃除を切り上げ、また春を探しに行く少女。
それを見送りながら、少し悲しみを覚える。
「確かに、ね…。それでも少し、付き合ってあげて…。」
言い残すと、空間を割り裂いて、どこかへと消えてしまった…。