第2章 霊の霊による人の為の


今の幻想郷の中で、唯一桜の咲き誇る場所。
桜は、雄大に咲いているにもかかわらず、
その周囲は、どこか寒々しい雰囲気に包まれている。
「あと少し…とは言ってみたものの…。
 足りるか否か、本当にギリギリのところね。」
「例年は、つぼみすらつけない桜ですしね…。
 満開の少し手前が、最も美しいとも言いますよ?」
「何も、この桜で花見をしよう、という訳ではないわ。
 満開にならないと、意味が無いの。」
「そうなんですか…。
 桜の満開には、よからぬ噂もつき物ですよ?」
「そう、そのよからぬことが見たいの。」
「そんな…ご自身が1番良からないじゃないですか…。」
「何か言った?」
「いえ、何でもありません。もう少し春を探してきます。」
「お願いね。」
沢山の桜の中、一際目を引く、寒気がするほど巨大な桜が1本。
樹木というよりは、物怪と呼んだ方が相応しいその風格は、
見るものの感情を、虚無へと返してしまいそうな程だ。
そんな桜の前にたたずむ、1つの影。
桜に負けず劣らない美しさを誇る、女性が1人見える。
桜に手を沿え、愛しそうに眺め、幹をさする。
「きっと…きっと貴方を解放してみせるわ…もう少し待っていて…。」