上りきって部屋に着くと、暖炉を眺めるような形でレミリアが腰を下ろす。
テーブルを挟んで、2人が言葉を待つ。
「見てもらった通り、あの子は持つ力がとんでもなく大きい。
ただ、大き過ぎるせいで制御がほとんど効いていない状態。
そのせいで、ヴァンパイアの糧である人間を自分で狩れないの。
あの娘に目をつけられた人間は、血液ごと吹っ飛んでしまうから…。
こちらも、人間も、お互いに良くないでしょう? それでは。
だから、何とかコントロールさせるように教育しているんだけど、
あの娘自身に覚える気が無いみたいで、いくら教えても無駄なの。
それに、あの娘の相手をしてやれる者なんてほとんどいないから、
地下に放り込んでおかないと、あの娘も周囲の者も、
皆が危険に晒されてしまう事になる。
遊び相手もいない部屋に1人だから、ストレスも溜まるでしょうね…。
悪循環だけど、これ以外にどうしようもないのが現状なのよ…。」
咲夜も美鈴も、下を向いたまま何も言う事が出来ない。
また1人、不幸な運命の下に生を受けた者の存在を知り、
この館のあり方、意味合いを、改めて噛みしめている。
いつも、どこか余裕を持った振る舞いをするレミリアも、
今はどこか、いつもよりも少し、伏し目がちだ。
「困った妹だけどね、やっぱり妹なのよ、あれでも…。
今となっては唯一の家族だし、情も沸くし、責任だって感じる。
これだけ生きてきて、姉らしい事をしてあげられた記憶は無いわ…。」
「そんな…でも、フランドール様の事を、
そこまで考えていらっしゃるのなら…。」
「ありがとう、美鈴。けどね、想いというものは、
伝わる事が無ければ、逆に凶器にもなってしまうの。
貴方なら、解ってくれると思うけど…。」
「それは…。」
「…本当に、伝わっていないんでしょうか。
少なくとも私には、そうは見えませんでしたが…。」
「…根拠は何?」
「少なくとも、フランドール様はレミリア様との攻防を、苦とはしていません。
むしろ、私の目には、楽しんでいるようにすら見えました。
それに、レミリア様と話をされている間、
終始、嬉しそうな声で話されているように聞こえました。
想いが伝わっていなければ、そんな気持ちにはなれないはずです。
それに、こんな事を言うのも恐れ多いのですが、
フランドール様の力があれば、もっとずるい方法で戦えば、
いかにレミリア様が相手だったとは言えども、
あそこまであっさり、追い込まれる事はなかったと思います。」
「…本当に、人間という生き物は、心を扱う事に長けているわね。
咲夜の意見が聞けて、少し救われた気分だわ…。」
レミリアが2人から視線を外し、1つ大きな溜め息をつく。