咲夜に連れられ、美鈴が書斎に着く。
改めて思うが、書斎も館全体も、とてつもなく広い。
1人で歩いていたら迷っていたかもしれない。
事情を話した咲夜がパチュリーを連れて戻ってくる。
「話は聞いたわ。そこにかけて。」
美鈴は、促されるまま書斎の机に向かって腰を下ろす。
「咲夜もかけたら? 必要無いとは思うけど、貴方にも魔法をかけておくから。
 その間、2人で話しでもしてみたら良いんじゃないかしら。
 多分、貴方達2人で門前に出る事になるんだろうから、
 コミュニケーションの1つや2つ、取っておいた方が良いと思うけど。」
少し考える咲夜。そして、無言のまま腰を下ろす。
パチュリーが医学魔道所を開き、魔法の詠唱に入る。
程なくして、2人を大きな泡のようなものが包み込み、2人の疲労を癒し始める。
「その泡の中にいる間、いつまでも疲労を取り除き続けてくれる。
 自分で泡の中から出れば、泡は自然に消滅する。
 時間まで2人で話をすると良いわ。何かあれば奥に来て。
 それじゃ、ごゆっくり。」
パチュリーが書斎の奥へ姿を消すのを見届けて、咲夜が口を開く。
「随分苦しい運命を強いられてきたみたいね。」
「まあ…私はほんの数年の事。父やおじはもっと苦しんでいたんだろうと思う。
 それに、あのヴァンパイア。500年ちかくも苦しんでいるなんて…。」
「レミリア様は、もう受け入れているみたいだけど。」
「それも驚いた。あんなに幼く見えるのに…。
 貴方は? 館の気配を察するに、
 人間はほとんどいないように感じるけど…。どうしてここに?」
「私は…レミリア様に拾われた、人間の中で生きられなくなった人間よ。
 …貴方の事だけ聞いておいて、何も話さないのは礼に反するわね。
 話すわ。私の事も。」
咲夜は、自分の過去の事や、レミリアとパチュリーから聞いた事、
館に来てから知ったことや感じた事を、ほとんど全て話した。
美鈴には、レミリアとはまた違う、親しみ易いところがあった。
つい先ほどまで、激闘を繰り広げていた敵同士だった事が嘘のようだった。
それに、恐らくは妖怪である美鈴の方が咲夜よりも長く生きているのだろうが、
人間年齢に変換した時の年齢差が大きくないのが、咲夜には嬉しかった。
「…この先、ずっとこの館に使えるつもり?」
「ええ、私には他に帰るところも無いし、生きられる場所も無い。
 何より、ここが心地良い。貴方はどうするの?
 村に戻るの? たとえ、それがとても厳しい道でも…。」
「それは…今はまだ解らない。けど、皆をここから逃がした後なら、
 何かはっきりしたものが見えるような気がする。」
「そう…。」