ここで美鈴が更に集中力を高める。
(必ず来る! もう1度、必ずナイフが私に迫ってくるはず!
 けど、そのナイフの動きは、完全に同時ではないはず!
 自分の感じた、2歩先に相手はいる…そこを突くしかない!!)
極限まで敏感に研ぎ澄まされた美鈴の触覚は、
場の流れをスローモーションにしたかのように、
素早く、正確に情報を捉えていく。
もちろん、咲夜が時を操っているからスローに感じているのではないが、
パチュリーの言う相対性理論に基く時間の変動率を踏まえると、
この時美鈴は、咲夜という相対対象に限っては、
ほんの一瞬だけ、時の流れる速さを変えていたのかもしれない。
(来た! 前が最初…もう左が来る…それなら…!!)
「ここだっ!!」
全身の気を一気に拳へと流し込み、自身の右側へと力いっぱい振り抜く。
その拳は一見、空を切るかのように見えたが…
「なっ…くぅっ…かはっ…。」
美鈴の拳は、見えない咲夜に命中していた。
咲夜は自分を1周するような動きになる、と読みきり、
そのタイミングをも完璧に捉えきった、奇跡の一撃だった。