「このままじゃ…じきに追い込まれてしまう…。何とかしないと…!
今の私に出来る対応策は、たった1つだけ…。チャンスは1回…。
どこかでタイミングを計らないと…!」
美鈴は1度、限界まで大きくナイフを避け、
自分と全てのナイフとの距離が同じになるように誘導。
瞳を閉じて大きく深呼吸をし、呼吸が整ったところで、
腹部に全神経を凝縮させていく。
「観念した…わけでは無いみたいね…。何か狙っている…。
その狙いごとまとめて、私の刃の前に倒れると良いわ!」
(まだだ…まだ遠い…私の肌に触れるほどまで、充分ひきつけてから…!)
無数のナイフが、美鈴の目前まで迫ってくる。
しかし、それでもなお、美鈴は目を開けようとはしない。
視覚は思っている以上に反応速度が遅い事を、美鈴は知っている。
五感の中で最も反応速度が速いとされる、触覚を頼りにして、
周囲の空気の流れに発生する乱れを、全て正確に感知し、
刃先が美鈴に触れる瞬間までナイフを引きつける。そして…
「ここだ…破ッ!!」
美鈴が身体に凝縮させた力を、一気に周囲へと解放する。
いわゆる『気を放つ』と表現される行動である。
気は美鈴から放射状に広がり、空気を震え上がらせ、
風を凶器に変換し、全てのナイフを一気に弾き飛ばす。
一瞬だけ美鈴の周囲が浄化される。