森を抜けた美鈴は、館の外堀のように流れる川を渡り、門の前までたどり着く。
(おかしい…館の近くに、全く人気が無い…。
 単身だし、不審者とは思われていないのかな?
 まるで、ノックしたら正面口を開けてくれそうな程無用心…。
 良く考えれば当然か。要塞じゃなくて、自宅だもんね、この感じ。
 それにしても…大きい…。ヴァンパイアってお金持ちなのかな?)
考えながら館の門に手を掛けると、不意に声が響く。
「いらっしゃいませ、失礼ですが、どういったご用件でしょうか?」
魔力か何かを利用した、インターホンのような物のだろう。
美鈴は、答える前に少し考える。
(客を装って、まず中に入って様子を見るべきか…。
 否、敵に囲まれるよりは、端から順に潰した方が安全か。)
「この館に、ヴァンパイア様はいらっしゃいますか?」
「アポはございますでしょうか?」
「いいえ、とても迷惑しているので、苦情を告げに来ました。」
「かしこまりました。どうぞ玄関の方へお進み下さい。」
門が自動で開き、広大な庭が美鈴の眼前に広がる。
(また、無駄に広いなぁ…。玄関って、あんなに遠いじゃない…。)