「続けるわね。
 エネルギー以外の、運動に関するほとんどは、
 速さ、距離、時間の3要素で構成されている。
 という事は、ボールが手から離れてから、手元に戻るまでの時間、
 お互いが目で見て確認した、ボールの移動距離、
 ボールと電車の動いていた速さ、の3つを確認して、
 それらを元に方程式で互いの主張する絶対値を結びつければ、
 2人の視点はイコールでつながり、矛盾は消滅する。
 けれど、方程式には、固定された不変数がなければ答が出せない。
 相対性理論では、光の速さ以外に不変の存在が無い前提だったわね。
 という事は、『速さ』の要素は必然的に、光速『X』に固定される。
 次に、ボールの移動『距離』。これは互いに現実として、
 目で見て確認しているから、変化のしようが無い。よって、20と120ね。
 この条件で速さ『X』を2人共に成立させるには、
 移動距離を経過時間で割った数値が同じにならなければいけない。
 けど、20と120を割って同じに数値に出来る1つの数なんて、あると思う?」
「あ…!」
咲夜が何かに気付く。
「そうね、そんな数が存在するわけが無い。
 つまり、自分も動いているレミィと、自分は静止している私とでは、
 経過した『時間』が違う、という事になる。
 レミィは私と比べて、少しの時間しか過ごしていないの。
 つまり、動いているレミィは時間がゆっくり流れている。
 そう説明しなければ、矛盾を解決できない。
 これが、時間が不変のものでは無い、という事実の証明になる。
 もちろん、今は解りやすいように、少し乱暴に光速を定義付けたから、
 本当はここまで簡単な話ではないけれど、大筋は同じ。
 だから、突き詰めていけば、同じ結論にたどりつく。
 貴方の時を操る程度の能力の存在は、相対性理論から成り立っている。
 逆に言えば、貴方の能力の存在そのものが、
 相対性理論の正しさを証明している、という事にもなる。」
咲夜もレミリアも、理解こそ出来ているものの、少々戸惑っている。
「何も難しく考える事は無いわ。
 所詮、理論なんて不安を拭う為の道具に過ぎない。
 生命体は、得体の知れない物事を恐がるのよ。
 起きる現実は絶対。相対性理論でもその点は変わらない。
 貴方は時を操れる。単純に、それで良いのよ。」