少し走ると、父の姿はすぐに見えた。
ぎりぎりまで、おじと直接対峙していたのだろう。
「お父さん!」
「美鈴…良かった…無事だったか…。」
その身はおじや村人よりも深く傷付き、
もう助からない事は火を見るよりも明らかだった。
涙を溢れさせながら、父の手を固く握り締める。
「美鈴、おじさんには会えたかい…?」
「うん、沢山話をしてくれた…。」
「そうか…。美鈴、最後の教えだ。よく聞きなさい…。
今後、長として生きるうえで、1つだけ忘れてはいけない事がある…。」
「何?」
「何であっても…誰であっても…争いがあってはいけない…。
その気持ちを、絶対に忘れずに行動しなさい。
父さんとおじさんは、それを忘れてしまったが故に、
こんな悲しい結果を招いてしまった…。
美鈴は、決して道を踏み外さないで生きるんだ…良いね?」
「解った、絶対に忘れない!」
「良い子だ…。おじさんの軍はいずれ戻ってきて、紅魔館へ向かうだろう。
初仕事から最高に難しい問題になってしまったね…。
申し訳ない気持ちで一杯だ…。けど、絶対に諦めちゃ駄目だ…。
…最後に…顔が見れて本当に良かった…。美鈴…綺麗になったね…。」
「お父さん…お父さん!!」
力の抜けていく父の身体を、壊れそうなほど強い力で抱きしめながら、
大粒の涙をぽろぽろとこぼす。どれだけ流しても、止まる事が無い。
どうしてこんな事になってしまったのか。
何故身内が殺しあう事になってしまったのか。
運命をノロいながら、美鈴は生まれて初めて、全力で拳を打つ。
地面が大きな音を上げ、深く広い穴が口をあけた。
父の身体を丁寧に置き、土をかぶせる。
「おじさんの軍には…きっとお母さんも同行させられるはず…。
迷っていたら、もっと悲しみが膨らんでしまう…。」
美鈴は顔を引き締め、背筋を正し、決意を固める。
「こんな運命を、私は絶対に許さない。おじさんの村だけでも守るんだ…。
ヴァンパイア…私が必ず討ってみせる…!
私はこの村の長、紅 美鈴! 村を壊した全てを、絶対に許さない!!」
何かを背負うにはまだ幼い、若き妖怪の孤独な戦いが始まった…。