どれくらい眠っただろうか。恐らく、それほど時間は経っていない。
何か、最近でも聞かない程に、外が騒がしい。
少し目をこすって、部屋を出ようとしたその時、
部屋の中に両親が駆け込んできた。その表情は穏やかではない。
「美鈴!」
「お母さん! どうしたの? この騒ぎ…まさか…」
「おじさんの村が、この村に攻めてきたわ…。」
「くそ…思っていたより、随分早かったな…。美鈴、こっちに来なさい!」
両親に連れられて、美鈴は食卓へ戻る。
普段見た事が無いくだり階段が、ぽっかりと口を開けている。
3人で駆け下りると、最深部には結構な広さの部屋があった。
ざっと見る限り、水や食料など、一通り必要な物が蓄えられている。
「美鈴、外が落ち着くまで、ここでじっとしているんだ。」
「そんな…お父さん、私も戦う! 少しでもお父さんの役に立ちたいの!
 こんな生き延び方、私はしたくないよ!」
「美鈴、よく聞きなさい。美鈴は、お父さんやお母さんよりも、
 遥かに大きく、強い力を持っている。
 もう、家族の中では一番強くなっている。
 その力は、父さんと母さんのためだけに使うものではない。
 村全体、いや、一族全ての為に使われるべき力なんだ。
 大きな力には、その大きさと同じだけの責任が伴う。
 もし、お父さんが戻らないような事があれば、

 自分で考えて、責任を持って生きなさい。

 美鈴は頭も良い。必ず出来るはずだ。良いね?」
美鈴は、生まれて初めて、親に反抗する。
「嫌だ! 私はお父さんとお母さんのために生きたい!
 一緒に連れて行って、お願い!」
「貴方! もう近いわ!」
「わかった! …美鈴…何もしてやれなかった父さんを、
 許してくれだなんて、とても言えはしない…。
 しっかり生きるんだよ、美鈴…。」
父は優しく微笑みかけると同時に、美鈴の首筋を叩きつける。
「そん…な……お…父さ…ん………お母…さ……。」
倒れこむ美鈴を優しく抱き止め、母と共に強く抱きしめる。
「よし…行こう。母さんにも、ひどい事をしてしまったね…。」
「何をおっしゃるんですか…。
 私達は夫婦です。どんなところへも、黙ってついて行きます。」
「…ありがとう、母さん……ありがとう、美鈴…。」
2人は、地下への階段を閉ざして、戦場へと飛び込んで行った…。