「そうか…そうだな。美鈴、ヴァンパイアの話を聞いたことはあるかい?」
「もちろん。私達妖怪よりも強大な力を持つ、
人間の血を糧にしている種族、だよね。」
「そう。それじゃ、そのヴァンパイアが何処に住むかは知っているかな?」
「う~ん、それは知らない。
てっきり、色んな所に居るものと思ってたんだけど…。」
「ほとんど正解だよ。その色んな所の1ヶ所に、この村の近くがあるんだ。
西の湖に浮かぶ孤島にある、紅魔館という洋館がそれだ。」
「へぇ、あの大きい湖、島なんてあったんだ。」
「そう、そこにヴァンパイアが住んでいるのは確かなんだ。」
「ふ~ん。でも、ヴァンパイアの糧は人間の血だよね?
何で私達が怯える必要があるの?」
父は、わが娘の洞察力の鋭さに、いささか驚きを覚える。
自分で発言した事だが、子供の成長というものは、
本当に大人の感覚の数段上を行くものだ。
「そこなんだ。美鈴、東の村に行った時の事を覚えているかい?」
「おじさんの住んでいる村の事?」
「そう。あの村は、ここよりも開けた土地で、
村としての規模も、ここより遥かに大きいから、良く目に付く。
けど、それは栄えるのが早くなるのと同時に、
多種族の目からも留まりやすくなる事を意味しているんだ。」
「襲われやすい、という事?」
「そうだね。実際、あの村は何度か大きな争い事に巻き込まれている。
今までは代々伝わる拳法や、皆の努力で生まれた兵法で、
何とか村を守り続けては来た。
けど、いつかヴァンパイアのような大きな力を持つ種族に、
村を襲われるかもしれない。その時は、守りきれるかどうか解らない。」
美鈴は黙って頷く。