「今の、パチュリーの作ってくれた取って置きだったのよ?

 逃げ切れたのは、運が良かっただけよ。」
「そうんなこと無いわ。

 何が起きているか把握すれば、何とかなるものよ。」
「うるさい! パチュリーだって調子が良かったら、

 貴方達なんかにやられるわけない!」
「そうだな。あいつはすごい力を持ってた。

 本調子だったら、多分危なかった。」
「そう…貴方達は運が良いだけ…そうに決まってる。

 運が良いから、日の光の下で平和に暮らせているの。
 運が良いだけで…ひどい、なんでそんなにひどいの?

 許せない! もう帰さない…禁忌:カゴメカゴメ!」
カード発動と共に、2人を取り囲むように、

無数の光弾が壁のように浮かび上がる。
「これは…囲まれたな。」
「そうね。まるで檻の中…けど、この中なら逆に安全かも…。」
霊夢がそういった矢先、光弾の壁を打ち砕く巨大な光弾が飛んでくる。
壁はもろくも崩れ去り、瓦礫となって大弾と一緒に2人を追い詰める。
「うわ! 耐震構造に問題があるぜ、この檻!」
「地震じゃないんじゃない? 流星でも落ちてきたように見えるけど。」
「流星も瓦礫も、下敷きになるには、ちょっと痛いな。」
「ええ、できれば遠慮願いたいものね。」
全て受け流すと、すぐにまた光弾の壁が築かれる。
常時、光弾の檻の中に閉じ込められているような状態だ。
「狭いでしょう? けど、弾は明るいから、暗くは無いでしょう?
 …良いわね、灯りだけでも確保できて。

 私は…私はずっと、暗闇の中で生き続けてきたのに!」
檻の壁が崩れる速度が上がる。

築かれては崩れ、築かれては崩れ…。
終わりの見えない繰り返しを、

ぎりぎりのところで避け続ける2人の集中力は、
不思議な事に、切れるどころか、更に研ぎ澄まされていく。
「これじゃ、相手の視認は無理ね…待つ? 切る?」
「慣れてくれば、今までのカードよりは楽な方だし、

 待っても良いと思うぜ。」
「事故起こさないでよ?」
「ああ、極力気をつけるぜ。」
「今までのカード1枚に対する飽きっぽさから言って、もう少しよね?」
「だろうな。それにしても…痛々しいぜ…コイツ…。」
「どうしたの?」
「さっき、地下には引きこもったわけじゃない、って言ってたよな?」
「そうね。事情があって出してもらえなかったんでしょ?」
「ああ、それって、軟禁みたいなもんだろ?」
「まあ…そうも言えるかも知れないけど…。」
「けど、コイツの今までの感じ、どう思う?

 館の住民は、嫌いじゃないんだぜ?」
「それは…一緒に住んでるんだし、仲良しなんじゃないの?」
「霊夢、お前は自分に伝えられてない何かの事情で、

 親に地下から出るなと言われて、大人しく聞くか?」
「う~ん…どうだろう…とりあえず聞くんじゃないかな?」
「例え、それが500年近くになったとしてもか?

 人間スケールに置き換えても良い。
 10年単位で地下に軟禁されて、それでも親を尊敬する自信はあるか?」
「そう言われると…。」
「だろ? 普通なら怒りに変わっていくはずだ。

 それでもなお、コイツは館の住民が好きなんだよ。」
「…そうね。そんな風に言ってるわね…。」
「本当に、館から出た事が無いんだ。

 もっと言えば、もしかしたら地下からも。

 きっと、館が自分の全てなんだろう…。
 自分にとっての館を否定されたり、

 壊されたりするなんて、何よりも許せないんだろうな…。」
「…私達が悪者、って事?」
「少なくとも、この館に住んでる者たちにとっては、な…。」
「後の事も、骨が折れそうね…。」
「間違いなく、伝わるぜ。心が折れなければ。」
視界を奪う優れた弾幕だが、

一定の事を繰り返しているだけのスペルであるため、
既に目のなれた2人にとっては、それほど問題にはならない。
それを悟ったのか、フランはカゴメカゴメを終了する。