リリカが感付いている通り、ルナサとメルランの体調も良くない。
実は、リリカの体調は、2人の姉が考えているより数倍悪い。
心配をかけまいと、ずっと言わずに生活していたが、
随分前から、風邪のような症状を引きずっている。
節約する中、食事は最低限も取っていなかったため、
慢性的な栄養不足が重なり、抵抗力が極端に低下。
長期間、症状を放っておいた結果、
気管支を蝕み、炎症が肺にまで達していた。
そして、それが常に行動を共にする2人の姉にも感染。
3人の部屋は、まさに病巣のような状態になっていた。
「今日は…もう寝よう…。」
「そうね。リリカ、眠れそう?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」
3人で入るには少し狭い、小さなベッド。
リリカを真ん中に寝かせ、両脇にルナサとメルランが入る。
「…姉さん、レイラの所、もう一度で良いから、行きたいなぁ…。」
「行けるわよ、必ず。あんなに沢山、一緒に笑ったんだから。
会えないはず無い。絶対、また一緒に遊べるわ。」
「…レイラもきっと…待ってくれている。
必ず…レイラを迎えに行こう…。」
3人はそれから起きる事無く、ビジョンが途切れた。
「「「レイラ…レイラ…」」」
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幸い、家はそれほど遠くは無い。すぐにリリカは身体を休める。
本来なら、病院で処方される薬が理想ではあるが、
3人は当然、保険などが適用される立場ではない。
ルナサは薬局へ駆け込み、すぐにリリカの元へ戻った。
「…ただいま。」
「姉さん、おかえり。どうだった?」
「…これしか買えなかった。」
ルナサの手には、液状の薬が入った小瓶が1つ。
「そっか。リリカ、飲める?」
「う…うん…けど…私、知ってるよ…。姉さん達も…」
「…それ以上は、言わなくていい。」
「ふふ…リリカ、もしここに、レイラがいたら?
レイラも同じような状態だったら、どうする?」
「え…それは…。」
リリカにとって、レイラは初めて出来た下の姉妹。
妹として一番レイラを可愛がってきたのは、他ならぬリリカだ。
ルナサとメルランに頭を下げてでも、レイラに薬を渡すだろう。
「それと同じ。ルナサ姉さんも、私もね。
だから、リリカ、貴方がこれを飲んで。」
「う…うん…。ありがとう。」
リリカは、瓶の中身を一気に飲み干した。
それからは、3姉妹で支えあい、母の残した蓄えと、
毎日のパフォーマンスによる収入で生き抜いてきた。
しかし、その収入だけで追いつくはずも無く、
たくわえが底をついて以来、満足に食事も取れていない。
身体は目に見えて痩せ細り、血色も明らかに悪い。
「今日も…冷えるわね…。」
「早く帰りましょ。日が落ちたら、それこそ身体が持たない。」
「そうだねぇ。それじゃ、すぐ…あ、あ…れぇ…?」
リリカの視界が大きく揺らぐ。ピントもいまいち合わない。
そう思った瞬間、身体が膝から崩れ落ちてしまう。
「リリカ!!」
「リリカ、どうしたの!?」
「な…何か…身体が…痛い~…。」
ルナサがリリカを抱え込む。
「…!! ひどい熱…。」
「姉さん、1回分くらいの薬なら買えるよね?」
「…大丈夫。メルラン、リリカを連れて帰って。
私は、一旦街に行って、薬を買ってから帰るから…。」
「え、駄目だよ~、何言ってるの~?」
リリカが身体を持ち上げながら、笑ってみせる。
「明日のお金と合わせて、パンを買わないと~。うっ…。」
すぐに咳き込んでしまい、言葉が続かない。
「パンなら…また後で買えば良い…。」
「私は…大丈夫だよ~。」
「ほらほら、大丈夫じゃないでしょ?」
メルランがリリカの腕をかつぐ。ルナサは手早く楽器をまとめた。
「買ったらすぐ戻るから…帰って安静にしてて…。」
「う…うん…わかった~。」