「がんで亡くなる人が増えている」と聞いたことがないでしょうか?たしかに、周囲でがんで亡くなる人は増えたなと、実感している方もいるかもしれません。
ただ同時に「がん治療はすごく進歩していて、最近ではがんになっても亡くなることが減った」と言う話も聞いたことがないでしょうか?
これは矛盾する話のようにも聞こえます。
日本のがん治療は本当に進歩しているのでしょうか?なぜ、がんで亡くなる人は増えているのでしょうか?今の日本で何が起こっているのか、最新データを使って、丁寧に解説していきたいと思います。
これは日本のがん死亡者数の推移を表したデータです。このデータを見ると、たしかにがん死亡者数はこの50年近く、どんどん増加しています。
これをみると日本でのがん治療はうまくいっていないようにも見えます。ネットではこのデータを出して、日本のがん治療のレベルがとても低いからだと解説しているものもあります。
しかし、その結論は明らかに間違っています。 がん治療は確実に進歩しているからです。
正確な死亡率を知るには年齢補正が必要
実は、がん治療のレベルを推し量る時に使われるのは、がんの死亡者数ではありません。年齢調整死亡率というものを利用します。これは年齢構成の変化を調整して、同じ年齢構成だとした場合に、どのくらいの死亡率かというのを見るものです。なんでこんな処理をするのかを理解してもらうために、一つ例をお示しします。
A市にある若い人しか働いていない会社の1000人と、B市にある老人ホームに入っている1000人の、がん死亡率を比較したとします。会社の方は、がん発症者は3人、死亡者が1人であるのに対して、老人ホームの方は、がん発症者が50人で、死亡者が15人だったとします。この死亡率だけみると、老人ホームの方が15倍の死亡率です。この二つを比較して、B市のがん死亡率は極めて高いと言えるでしょうか?
もちろん言えないです。
がんになる人がとても多い高齢者の集団だと、がんで亡くなる人は増えますので、年齢を合わせた集団を比較しないと、どちらの方が死亡率が低いのか、どちらの地域の治療水準が高いかの比較ができません。
そこで行われるのが年齢調整死亡率を求めるという手法です。細かな計算方法は省きますが、要は同じ年齢構成の集団になるように、補正をしてから比較します。
日本の人口の年齢構成は大きく変わっていますので、この年齢調整死亡率を見てみないと、正確な日本のがん死亡率の変化はわかりません。
このデータを利用して、不安を煽って、商品を買わせようとする記事が散見されます。
がん死亡数が増えているのは事実なのですが、その背景を正確に理解しないと、誤解をしてしまいます。データを悪用する人たちに騙されてしまわないように、注意をしていただければと思います。ぜひ、正確な情報をもとにして、がんという病気と向き合ってもらいたいなと思います。