この映画を最初に観たのはもうずいぶん前、80年代。
テレビの深夜映画だったと思う。
やたら忙しいレースの会社に勤めてた頃、週末に体を休めればいいのに何となく見てしまった。
寺山修二という名前も特に知っていた訳でもなくアングラとかシュールな劇団という漠然としたイメージで捉えていた程度だった。
難解な感じでグイグイと引き込まれるような感じでもなかったのだが、でも最後まで見てしまった。

今回見たのは友達がかなり昔のテレビ放送をビデオテープに録った物をさらにDVDに落とし、それをポータブル機の小さな画面で見せてもらった・・やや駆け足であったが(笑)

物語の舞台は時代や国籍が不明な感じの架空の村。ロケは沖縄らしい。
主人公の捨吉とスエはいとこ同士・・血縁関係は夫婦になってはならぬ、という村の掟を破って一緒になった二人。
捨吉・山崎努、スエ・小川真由美、この雰囲気を醸し出す演出もすごいが役者の演技による部分が何とも言えずすごい。
数々のトラブルの末、大作を刺殺してしまった捨吉は村人に殺され、スエは「穴」・・(あの世に繋がっているとされる)に身を投げてしまう。
そんなプロセスを何ともシュールな演出のもと、描いている。
主人公や大作、村人の心の動線も、自らの正しさを自らが見出せなくなり論点を挿げ替える様、満面の笑みをたたえながら愛を語り恫喝する様をリアルに描き出していく。
そしてそれは心の変遷とその履歴として積み重なっていく。
俳優の力を強く感じさせる場面はさりげなく散りばめられていて、特に小川真由美が演ずるスエの・・決して賢くもなく、そしてあまりに弱く、でも儚くも必死に幸せになろうとする様は心打つものだ。
自らが殺した大作の亡霊によって記憶を序々に失っていく捨吉が、物事を忘れないために身の周りの物、鍋やザルにその品の名称を書いて貼っていくシーンは実家の母のアルツハイマー対策でヘルパーさんの助力のもとテレビや電話に張り紙していたのと同じだったので笑って見られない部分ではあったが(笑)、そのうち捨吉は「俺」と書いた紙を首から下げて、さらに「スエ」と書いた紙をスエに貼る。
「それだけ?」とスエに言われた捨吉は「俺の妻、三十一歳」と書き足す。
それを見てフッと満足げな表情を見せるスエ・・役者魂炸裂(^-^)
大作・原田芳雄はもとより高橋洋子、高橋ひとみ、石橋蓮司、地獄大使・天本英世!すごい顔ぶれ!

テーマとして都市開発に対するアンチテーゼの意味もあるらしいが全体の流れからすると繋がりが希薄に思える。
何処かへ行ってしまった良心。
この世とあの世を繋ぐ「穴」とか、その穴に身を投げるスエが最後につぶやく
「人間は中途半端な死体として生まれてきて、一生かかって完全な死体になる」
「百年たてばその意味が分かる。百年たったら帰っておいで」
とかがどんな意味でどこに掛かっているのか解らない部分も多くて難解だが、散りばめられたエッセンスがただササくれたシュールな世界だけでない事を示してくれているし後味はけして悪くはないと思う。
次に見る時は駆け足でなくゆっくり見てみようと思う(^-^)




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