「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――

Arika報告書v1アイコン昭和初期から現在へ。雑誌の附録に秘められた想いとは―‐。平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――。昭和12年、雑誌『乙女の友』編集部で給仕の仕事をはじめた波津子。主筆の有賀や看板作家の長谷川など個性あふれる面々に囲まれ、仕事を覚えていく波津子だったが、やがて太平洋戦争が勃発して……。戦前、戦中、戦後という激動の時代に、情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々の姿を生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。実業之日本社創業120周年記念作品。本作は、竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)の存在に、著者が心を動かされたことから生まれました。



伊吹有喜
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。