【目次】
■ひとりワルツ
つとめ先のスナックに時折現れる優男・ヤマさんに、咲子はひそかに思いを寄せている。
中学生になった娘の千春と再会を控えた咲子を、ヤマさんはデートに誘う。

■渚のひと
医大に通う息子が帰省する。
久々に家族三人で囲む食卓の準備で内職を早めに切り上げた育子。
隣家の千春は、息子が卒業した高校の後輩にあたるのだが……

■隠れ家
ススキノの踊り子・麗香は、兄が帰ってきたら舞台を去ると決めていた。
その夜、8年ぶりに兄が姿を現した。


■月見坂
晴彦は高齢の母親と二人暮らしだ。
商品の苦情を述べた母への謝罪に訪れたスーパーの配達係の女性を見て、晴彦は……

■トリコロール
小さな港町で所帯を持って25年。桐子は夫とふたり、理髪店を営んでいる。
ひとり息子は家業を継がずに街をはなれている。

■逃げてきました
市役所勤務のかたわら、詩作をつづけてきた巴五郎。
彼が主宰する詩作教室に、塚本千春という30代の女が入会してきた。

 

■冬向日葵
罪を犯し、逃げ続けて何年になるだろう――。
能登忠治が道北の小さな一杯飲み屋の女将、咲子と暮らして8年が過ぎた。


■案山子
東京から北海道・十勝に移住、独りで野中の一軒家に暮らす
元編集者・河野保徳の前に現れたのは……

■やや子
図書館司書の田上やや子は、交際半年の恋人に乞われ、彼の母親と会っている。
内心、彼と別れようと考えているやや子だったが……



桜木紫乃の真骨頂がここにある!
いびつでもかなしくても生きてゆく、桜木ワールドを凝縮した珠玉の作品集。

Arika報告書v1アイコン奔放な実の母親とも、二度目の結婚でさずかった実の娘とも生き別れ、北の大地を彷徨った塚本千春という女。昭和から平成へと時代とともに移りゆく彼女の数奇な半生を、彼女にかかわった人物たちの視点を通して浮き彫りにしながら、自らの居場所を求めてもがく人々の哀歓を、研ぎ澄まされた筆致で浮き彫りにする九つの物語。桜木紫乃の真骨頂がここにある!
 



桜木紫乃(さくらぎ・しの)
1965年北海道釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。同作品を含む『氷平線』で2007年に単行本デビューし、注目を集める。12年『ラブレス』で「突然愛を伝えたくなる本」大賞、13年には同作で第19回島清恋愛文学賞を受賞。さらに13年『ホテルローヤル』(集英社)で第149回直木賞を受賞し、一躍人気作家の仲間入りをする。近著に『無垢の領域』(新潮社)『蛇行する月』(双葉社)。