舞台が本屋でも、図書館でも、図書室でも、出版社でもない物語に本がでてくる物語を集めてみました。
紹介する本は、ほっこりするような話、しんみりしちゃうもの、ミステリーと色々です。
物語のなかでも本が愛されている素敵な本たちです。
物語の中の本
空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)/東京創元社
¥734
Amazon.co.jp
文学部の女子大生が主人公のシリーズで、シリーズ全て読み終わる頃にはかなり文学について詳しくなれた気がします。題材となっているのは自分の日常にも起こりそうな何気ない謎ですが、その裏に潜むドラマに時にぞっとしたり、ホッとしたりしました。どの話も面白かったのですが、個人的にはタイトルにもなっている「空飛ぶ馬」が、読了後ほっこりできていちばん好きでした。主人公は女子大生、探偵役が落語家の師匠、という異色の組み合わせ。その軽妙でいて芯のある言葉で語られる解決編には不思議な説得力があり、湧き立つような知性と品の良さが心地良く響いてくる。一見穏やかなだけの物語のように見えて、実はぴりっと悪意がきいているものもあり、人という存在を奥底まで見つめている。北村薫は元高校の国語教師だからか、これ以外にもほとんどの本の主人公が本好きで、文学の話が出てきます。
青年のための読書クラブ (新潮文庫)/新潮社
¥473
Amazon.co.jp
伝統あるお嬢様学校「聖マリアナ学園」。転入生・烏丸紅子は中性的な美貌で一躍、学園のスターとなる。その裏には異端児たちの巣窟「読書クラブ」の部長で、容姿へのコンプレックスを抱えたニヒリスト妹尾アザミの、ロマンティックな詭計があった……。学園の創設から消滅までの百年間に起きた数々の事件の背後で活躍した歴代の「読書クラブ」員。その、あらぶる乙女魂のクロニクル。舞台が女子高で少し同性愛的な要素が入ってしまうのですが、そこまで露骨な描写はないので苦手でなければぜひ。読書好きな女の子達が学校で起こった様々な事件を語るお話です。一話ごとにそれぞれテーマとなるような本が登場します。100年経っても乙女たちの根本は変わらない。読書クラブよ永遠なれ。華麗なる女子高の裏歴史、それだけでも興味津々。
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)/角川グループパブリッシング
¥605
Amazon.co.jp
黒髪の乙女にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんなニ人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。二人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回とは? 大好きな小説ですが、特に第二章の舞台が京都・下鴨神社の古本まつりで、本好きにはたまりません。本書を片手に京都の街並み散策したい。
はじめまして、本棚荘(MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)/メディアファクトリー
¥596
Amazon.co.jp
お家賃は、「本」でいただきます? かつては「本」が家賃だったという本棚荘。だけどそこにいるのはへんてこな住人ばかりで……。本棚荘の大家さんは言う。「昔はねえ、お家賃というのは本で払ったものですよ」と。中にも外にも本棚だらけのそのアパートに引っ越してきた〝わたし〟。出会ったのは、猫芝居をなりわいとする猫遣い師、本棚に捨てられていたサラリーマンなど、やっぱりへんてこの住人たち。どこかいびつで、とげを抱えた彼らに触れるうち、〝わたし〟のなかで少しずつ何かが変わり始めて……。不可思議で、キュートで、でも読後はじんわり。一度読んだらクセになる、キリフキワールドへようこそ。この世界観、好きだなぁ。独特の世界観。フワフワしてるようでトゲトゲしてる。優しいようで、手厳しい。つかみ所のない、夢のようなお話でした。とげ抜き師に猫遣い、家賃は本や面白い本でも可とか、何だソレ?の連続のはずなのに、不思議な程それが馴染む。あっさりした文章、余計な情報を過分に与えないことで想像が膨らみ、自分だけの本の世界に入り込んだよう。作者の他の本も読んでみたい。