海外を旅する人も増え、異文化に対する畏敬や憧れは身近なものとなりましたが、もしも過去の日本にタイムスリップしたら、どれほどのカルチャーショックを受けることでしょう。何百年も前の日本人の暮らしぶりや考え方が、形や意義を変えながら、今に受け継がれていると考えると、とても不思議な気分になります。時代劇には欠かせない、日本酒に関する本と一緒にご案内します。
今回の書籍案内人・・・・Arika
志水辰夫が初の時代小説に挑戦!
青に候 (2007/02/22) 志水 辰夫 商品詳細を見る |
時は幕末。播州の小藩に仕える神山佐平は、同期の縫之助と共に藩主の交代により、馘首されてしまう。やむをえない理由で同僚を切り殺してしまった佐平は江戸へ舞い戻るが先に戻ったはずの縫之助は行方不明に…。お家騒動をネタに江戸屋敷を脅していたらしい。執拗に追われながら真相を探る佐平。
いつの時代の若者にも共通する、未熟で愚直な自己過信という「青さ」。佐平も、理想では通らない現実に直面して、はじめて自分の意志や信念が脆弱すぎることを思い知り、自暴自棄に陥りそうになるのだが・・・・・・・物語は、彼の決意が実を結ぶかどうかを語ることなく幕を閉じる。チャンバラあり、気分違いのロマンスあり。時代小説ならではの醍醐味が味わえる、青春冒険小説です。
ついに出た。芭蕉本の決定版!
悪党芭蕉 (新潮文庫) (2008/09/30) 嵐山 光三郎 商品詳細を見る |
松尾芭蕉といえば『奥の細道』を思い出す人が多いでしょう。俳聖と呼ばれ「人生は旅だ」とおっしゃった偉い人。でも芭蕉にはけっこう謎が多く、芭蕉隠密説まで出ています。さて嵐山さんの『悪党芭蕉』。タイトルにギョッとしますが、読んでみると大変中身の濃い、すごい本です。多くの弟子を抱え、その弟子たちもひと癖ある者ばかり。中には罪人までいます。「生類憐みの令」が世を蔽う元禄時代。句会という座の文芸を丹念に検討し、芸術家芭蕉と興行師芭蕉の両者にスポットを当てながら、ひと筋縄ではない芭蕉の実相に迫ります。作者も「書き終えて、へとへとに疲れた」というぐらい大変な力作。読売文学賞と泉鏡花文学賞、ダブル受賞作品です。
向う三軒両隣なんていう暮らしがここにあります!
十日えびす (祥伝社文庫) (2010/04/14) 宇江佐 真理 商品詳細を見る |
錺職人の夫が急逝した途端に、後添えの八重は生さぬ仲の義理の子どもたちから家を追い出されてしまう。ただひとり、八重を心から慕う末娘おみちと裏通りに木間物屋を開いて暮らすことにしたが、年がら年中布団をたたく向かいの 女お熊に手をやく。しかもその病持ちの息子を好いているおみち、自分たちを追い出した義理の息子が落ちぶれて金の無心に・・・・・・と八重の苦労は絶えません。互いの気持ちを汲み取り助け合い、次々に起こる逆境にもめげず、健気に前向きに生きていく江戸人情話。それにしてもいざとなったら女の方が生きる知恵と工夫と芯の強さで乗り越えるたくましさに元気がもらいました。
艶やかな美女に眉目秀麗な若侍、なんとも魅力的な人たちだが・・・・
あかんべえ〈上〉 (新潮文庫) (2006/12/22) 宮部 みゆき 商品詳細を見る |
あかんべえ〈下〉 (新潮文庫) (2006/12/22) 宮部 みゆき 商品詳細を見る |
時は江戸時代、ここ深川の料理屋「ふね屋」には五人の亡者が迷っていました。といってもおどろおどろしいものでものではありません。一人娘のおりんにだけ見える「お化けさん」たちです。艶やかで粋な姐さんに美しい若殿、天才按摩師、あかんべーをする小娘、そして、血眼で抜き身を振りかざす素浪人。彼らは自分たちがなぜここにいるのかもわからないままに、ここに居ついていました。おりんはお化けさんたちと心をかよわせながら、ふね屋をめぐる怪異の謎を解こうとします。それは図らずも人間の業や因縁を解きほぐしていくことでもありました。利発でしっかりもののおりんの健気さにはげまされ、今生きているわたしたちの世界を、少しでも過ごしやすいものとしていきましょう。
日本酒のためのバイブル登場!
知識ゼロからの日本酒入門 (2001/09) 尾瀬 あきら 商品詳細を見る |
「夏子の酒」ってを漫画を知ってます? コピーライターへの道を捨て、日本一の酒造りを目指す夏子。そのひたむきな姿に打たれて、何度熱い涙を流したことでしょう。あの作者がまたまたユニークなエッセイを私たちに届けてくれました。内容はもちろん日本酒。吟醸とは? 原酒と生酒はどう違う? 山廃って何?・・・・・基礎知識からおいしい日本酒の飲み方まで、それこそ痒いところに手が届く感じで教えてくれる。気が遠くなるほど複雑にして繊細な酒造りの工程。随所に夏子のイラストがにっこり微笑んで・・・・・・。楽しく為になる薀蓄がいっぱいです。日本酒って日本文化の精髄なんですね。日本酒を飲みながら、時代小説を読むなんてのもいいなぁ。続編も出てますよ。
夏子の酒(1) (2012/11/05) 尾瀬あきら 商品詳細を見る |
さらに極める日本酒味わい入門 (2003/12) 尾瀬 あきら 商品詳細を見る |