海外を旅する人も増え、異文化に対する畏敬や憧れは身近なものとなりましたが、もしも過去の日本にタイムスリップしたら、どれほどのカルチャーショックを受けることでしょう。何百年も前の日本人の暮らしぶりや考え方が、形や意義を変えながら、今に受け継がれていると考えると、とても不思議な気分になります。


アイコンりす今回の書籍案内人・・・・Arika


黒い森(ドイツ)からきた江戸読み物
 捨てられた江戸娘/眞海 恭子


捨てられた江戸娘捨てられた江戸娘
(2003/03/31)
眞海 恭子

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Arikaアイコン(小)1戸時代の魅力がいっぱいの、楽しめる小説です。気取ることなく、品格などと威張らないで読めるのもいい。第一話は自分のあまりに長い影法師から逃れようとする仏師の話。第二話は仇の息子と結ばれる武家娘。第三話は呉服問屋に起きる奇怪な殺人事件とその真相…。いずれの三編も、身分制社会という江戸時代に生きる人々の姿と心の壁が丁寧に描かれる。自由といわれる現代社会の人間関係の希薄さを思うと、江戸時代っていいなぁと素直に思えてくる。「文明開化」という魅惑的な美女のために、恋人(日本)から捨てられた捨てられた娘(江戸)。その娘(江戸)をやるせないほど深く愛してやまない作者の思いが、この作品のもうひとつの魅力になっています。





ドラマファンも度胆を抜かれます!
 大奥[第一、ニ巻]/よしながふみ

大奥 1 (ジェッツコミックス)大奥 1 (ジェッツコミックス)
(2014/08/28)
よしながふみ

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大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))
(2006/11/29)
よしなが ふみ

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Arikaアイコン(小)1台は八代将軍徳川吉宗の世。謎の疫病により激減した男子は子種を持つ宝として大切に育てられ、女が全ての労働力の担い手となっていた時代。驚いたことに漫画『大奥』はそんな男女逆転の世界で進みます。将軍がタフな女なら大奥も美男3千人を集めた女人禁制の男の城。嫉妬と陰謀うごめく男大奥を舞台に、凛とした生き方を貫こうとする将軍や男たちのかっこよさ! 

第二巻は家光の時代に遡り、男女逆転の過渡期に生きる人々の愛と苦悩を描いていて、泣けます。大奥の組織、組香や拳遊びなどの江戸文化も興味深く、パラレルワールドのような『大奥』の世界にずっとひたっていたくなります。その後の続編も次々出てるので読んでみてください。




よろず相談、喧嘩成敗何でも来い!
 まんまこと/畠中 恵

まんまこと (文春文庫)まんまこと (文春文庫)
(2010/03)
畠中 恵

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Arikaアイコン(小)1「まんまこと」とは「真実。ほんとうのこと」。江戸は神田の名主の玄関先に待ち込まれる揉め事、跡取り息子の麻之助と、遊び人でいい男・清十郎と石頭で堅物の吉五郎というふたりの悪友が解決する全6編の連作短編集。可憐だけれど芯が強く、こうと決めたら動かない意気地のある女たちも登場し、事件解決に一役買います。お腹の子の父親を巡り、麻之助たちが疑われる表題作ほか、「万作、青いやつ」では、麻之助と、親友・清十郎の義母・お由有の意外な関係も徐々に解き明かされ、切ない想いが胸に迫る。淡い恋や細やかな人情に彩られ、八方丸く収まるあたたかな読後感が存分に味わえます。




次々読破したくなるシリーズ(その1)
 剣客商売 /池波 正太郎

剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)
(2002/09)
池波 正太郎

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Arikaアイコン(小)1中・田沼意次が権力を誇った江戸中期を背景に、小粋な無外流の剣客・秋山小兵衛と、実直で剣一筋の息子・大治郎、女性剣客の佐々木三冬らがさまざまな事件に遭遇し、活躍する姿を描く。『鬼平犯科帳』や『必殺仕事人』の原案となった『仕掛人・藤枝梅安』と並ぶ池波正太郎の代表作。全18巻。





次々読破したくなるシリーズ(その2)
 剣客商売庖丁ごよみ /池波 正太郎

剣客商売庖丁ごよみ (新潮文庫 い 17-20)剣客商売庖丁ごよみ (新潮文庫 い 17-20)
(2003/06)
池波 正太郎

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Arikaアイコン(小)1973年にドラマ化されて以来、繰り返し映像化されているが、こちら池波作品の魅力のひとつに料理がある。江戸の町並みや人情を現代に求めることは難しいが、粋で、旨そうな素材を使った料理の数々は再現可能。『剣客商売 包丁ごよみ』は作品に登場する料理を実際に料理人が再現し、写真入りでまとめたもの。「鳥賊(いか)の木の芽和え」「いさきの刺身」「白魚の豆腐の煮付け」など江戸の刺客が愛した味の数々が四季ごとに登場する。著者自身による挿絵にも「あじ」がある。