ミステリー小説の90%は恋愛小説。
登場人物はあこがれの街に住み、料理の達人だったり愛犬家だったり。
そんなディテールの面白さと魅力的な登場人物、ときにおかしくて、ときにスリリングな謎解きが一体となったミステリー小説の楽しさを体験してみて!?
さて今回は、子ども探偵の5冊。
何者にも染まっていない純粋な視点で物事を見極める子供。
あるときは、残酷なまでにも真実をついたり、無邪気なイタズラでウンと大人を困らせてしまう。
でも、事件解決となれば、汚れない視線が大切。
そんな純粋な目で見つめられれば犯人だってタジタジだ。
ミステリー小説のでも、子供が活躍する作品は意外と多いもの。
映画『ホーム・アローン』のカルキン君を彷彿とさせる子供探偵ものは、純粋な気持ちに戻りたいときに必読の書です。
『ひとりぼっちの目撃者』/デズモンド ラウデン。
ジョフリーはなにをやっても愚図でいじめられっ子の中学生。
ある日彼は、走り去る輸送車の後部から血がしたたっているのを目撃した。
仲間に懸命に訴えるが誰も取り合ってくれず、逆に嘘つきだと先生から大目玉をくらう始末。
だが、ひとり不安に怯える少年の背後に奇想天外な強奪作戦を企む男たちの魔手が迫っていた。
悪党どもに立ち向かう少年の奮闘ぶりを軽快に描く、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
読んでて、ジョフリーがんばれ!って応援したくなります。
『スイート・ホーム殺人事件』/クレイグ・ライス。
スイート・ホーム殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 28-1) (1984/10) クレイグ・ライス 商品詳細を見る |
小生意気な3人の子供が、女流推理作家である母親のために殺人事件を捜査し解決し再婚相手をあてがう話。
至れり尽せりとはまさにこのこと。子供が主役だが、これはどう見ても大人のためのファンタジーでしょう。ストーリーだけを抜き出したら、子供だましと言う人がいるかもしれませんがミステリとは何か?・・・一つの答えがここにあります。
『遠きに目ありて 』/天藤 真。
遠きに目ありて (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (1992/12) 天藤 真 商品詳細を見る |
成城署の真名部警部は、偶然知り合った脳性マヒの少年の並外れた知性に瞠目するようになる。
教えたばかりのオセロ・ゲームはたちまち連戦連敗の有様だ。そして、たまたま抱えている難事件の話をしたところ、岩井信一少年は車椅子に座ったまま、たちどころに真相を言い当てる…。
数々のアイディアとトリックを駆使し、謎解きファンを堪能させずにはおかない連作推理短編の傑作。
本作は、主人公の探偵役が身体障害者である、ということで注目されたが注目すべきは、そのミステリとしての完成度の高さである。本連作における謎の提出、伏線の張り方とその収束、そして解決に至るロジックは、実にみごとで本格ミステリのお手本ともいえる。
子供を使った大人向けミステリーというのは、実際には書くとなると相当大変だと思うのですが、これは難しいタイプの内容を見事に生かしきった佳品といえ、個人的には第2話と5話がよく出来ていると思います。
『眠れる犬』/ディック ロクティ。
セレンディピティ・ダールクィスト。通称セーラ。
14歳の彼女は、女優の祖母とロスで2人暮らしだった。退屈な毎日が続いていたが、ある日彼女の愛犬グルーチョが失踪、セーラは警察へ届けでた。だが、警官が相手にしてくれるはずもなく、冗談半分に紹介されたのが42歳の私立探偵レオ・ブラッドワースだった。そしてこの時から14歳の“わけのわからない小娘”と42歳の“つまんないことばっかりいってる中年”探偵の奇妙な道中が始まった。反発しあいながら、互いを助けあってグルーチョを捜す旅を続ける2人。だが、この愛犬失踪の陰にはマフィアがらみの恐るべき謀略の罠が張り巡らされていたのだ。
現代ロサンゼルスを舞台に、軽妙なユーモアをまじえて新鋭が放つ傑作ハードボイルド作品なのだが、14歳の小娘セーラと42歳の中年探偵レオ・ブラッドワースを一章ずつをこの二人が交互に一人称で語り部を務めながら物語は展開する。
小生意気でその実非常にナイーブな少女セーラと、中年男ブラッドワースのやりとりと、その会話が楽しい。
ふつふつと笑いがこみ上げてくるタイプの可笑しさ、面白さがある。
『パーフェクト・ブルー』/宮部 みゆき。
パーフェクト・ブルー (創元推理文庫) (1992/12) 宮部 みゆき 商品詳細を見る |
高校野球界のスーパースターがガソリンを全身にかけられ焼死するというショッキングな事件が起こった。たまたま事件現場に行き合わせた弟の進也と、蓮見探偵事務所の調査員・加代子、そして俺――元警察犬のマサは、真相究明に乗り出す。
社会的テーマと卓抜な人物描写で今日を予感させる鬼才・宮部みゆきの記念すべき爽快なデビュー長編。
衝撃のプロローグから意外なエピローグまで、読者を飽きさせない内容で、これがデビュー作とは、ほんとに驚いたものです。宮部作品に出てくるキャラクターというのは、ほんとにどれも魅力的。キャラクターもさることながら、ストーリー展開もすばらしい。
高校生が焼き殺される、なんてショッキングな事件と社会的なテーマを絡ませてこのラストに導くとは…。
先が気になって気になって、どんどん読み進めてしまいます。