ミステリー小説の90%は恋愛小説。
登場人物はあこがれの街に住み、料理の達人だったり愛犬家だったり。
そんなディテールの面白さと魅力的な登場人物、ときにおかしくて、ときにスリリングな謎解きが一体となったミステリー小説の楽しさを体験してみて!?
さて今回は、ファンタジーの3冊。
妖精が出てきたり、
未知の世界に迷い込んだり、
奇妙な事件が起こったり、
ミステリーではないけれど、”ミステリアス”な楽しみを与えてくれる点ではいっしょ。
その代表作が短編集『ゲイルズバーグの春を愛す』は現代風刺が胸に痛い作品。
『ゲイルズバーグの春を愛す』/ジャック・フィニイ。
ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26) (1980/11) ジャック・フィニイ 商品詳細を見る |
『ゲイルズバーグの春を愛す』は、時のかなたへと旅立ち、溶け込んでいく人たちの姿が、これ以上ないというくらいあたたかく描かれている。
「ノスタルジックに過ぎる」「単なる逃避でしかないよ」と嫌う方もいるだろうけれど、私はそこが素敵だと思う。過去への憧れを、タイム・トラベルというロケットに乗せて打ち上げる作者の思いが、この宝石箱のような短篇集の中で輝いている。
『図書室のドラゴン』は16歳の少年の物語。
『図書室のドラゴン 』/マイクル カンデル。
16歳のシャーマン・ポッツは悩み多き高校生。ある日、ため息を23回ついた拍子に、なんと別世界の図書室に転相してしまった。しかも、それが魔法の図書室ときていた。そこで本を読めば、ドラゴン退治の騎士になるのも超能力者になるのも思いのまま、実際に物語のなかにはいりこんで冒険ができるのだ。現実世界の憂さを吹き飛ばせとばかりに、シャーマンはさまざまな本を試してみるが…。新鋭が贈るユーモア・ファンタジイ。
このマクガルヴィーランドでは、図書室の中にある本の中に自由に行き来でき、いろんな物語の主人公になることができるので、いくつもの物語と現実が次々に(細切れに)同時並行的に進行していく。
思春期の少年の溜息とともに語られる、ちょっと湿っぽいひねくれたSF&ファンタジーだけど、いろいろ読んできてちょっと変わり種の本が読みたい人にはいいかもね。
『一角獣をさがせ!』は私立探偵マロリーが活躍。
『一角獣をさがせ! 』/マイク・レズニック。
うだつのあがらない私立探偵のマロリーは、大晦日の夜、ひとり寂しく酒を飲んでいた。すると緑色の妖精が出現して、盗まれた一角獣を探してほしいという。すべてはアルコールの幻覚症状かと思われたが、どうやら妖精はほんとうに目の前にいるらしい。現実の世界になんの未練もないマロリーは妖精に案内されて異次元のマンハッタンへと旅立つが…。ハードボイルド、ファンタジイ、RPGの要素がブレンドされた異色作。
ハードボイルドな主人公がファンタジーゲームのような世界でだんだんとコツをつかみ、つわもの相手に出し抜く痛快さにワクワクしました。
期待を裏切らない、この皮肉の聞いたおもちゃ箱の様な展開をぜひ一度楽しんでほしいです。