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■謎解き+αのユーモアミステリーの世界へ、ようこそ・・・!

ミステリー小説の90%は恋愛小説。

登場人物はあこがれの街に住み、料理の達人だったり愛犬家だったり。

そんなディテールの面白さと魅力的な登場人物、ときにおかしくて、ときにスリリングな謎解きが一体となったミステリー小説の楽しさを体験してみて!?

さて今回は、ゲイ・ミステリーの3冊。



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デビッド・ブランドステッターというゲイの主人公が活躍する全12シリーズの第3弾!


『闇に消える』/ジョゼフ・ハンセン

闇に消える (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1415)闇に消える (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1415)
(1983/06/24)
ジョゼフ・ハンセン

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主人公は、保険会社の調査員デイヴィッド・ブランドステッター。保険金を支払うかどうか、保険会社の依頼を受けて当事者を調査する仕事。とかく保険金には詐欺あり殺人あり、調査をしているうちに必ず隠された事件に遭遇し巻き込まれていく。

デイヴは初登場時で40代半ば、最終作品ではとうに70才を過ぎていたことになるのだが、そうとは思えない長身かつ若々しい肉体!と正義感によって粘り強く事件を解決するカッコイイ中年。銃は持たず、下品な言葉づかいもせず、インテリアとエクステリアに凝り、小物や車にもこだわる。

アメリカ西海岸の、主に架空の町で事件は起こる、ちょっと硬派のシリーズ。

最大の特徴は、主人公がゲイであるということ。この冒頭では、彼は長年連れ添った男性の恋人を病気で亡くし、悲しみに沈む自殺志願者。彼は添い遂げる相手を探しつづける古風なタイプ。デイヴは前半では父親の築いた大手生命保険会社の調査員だが、彼がゲイであるがゆえに取締役会の反対にあい、父の死後その会社を継ぐことができず、シリーズ後半ではフリーの調査員になる。

作者ハンセンは、教師などの職をへて作家になり、彼自身はゲイではないが、ゲイの公民権運動を長年にわたって行なう一方、このシリーズを含め、面白くも鋭くアメリカ社会の問題をえぐる作品を多く書いている。




目撃されたのは男とのセックス現場。

『ゴールデン・ボーイ』/マイケル ナーヴァ

ゴールデンボーイ (創元推理文庫)ゴールデンボーイ (創元推理文庫)
(1994/02)
マイケル ナーヴァ

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様々な偏見を緊迫感溢れるワイズクラックで切り抜けていくゲイの弁護士リオスの待望第二弾。

ジム・ピアーズが犯人だと誰もがそう考えた。

ゲイであることを親にばらすと脅されたあのウェイター助手が、相手を殺害したに違いない。

もはや疑う余地もないほど状況に追い詰められた被疑者を、リオスの親友が弁護してくれという場面から始まる。

だがこの状況不利な事件を弁護をする羽目になったリオスが、さまざまな妨害や人間関係の複雑を紐解いていく内に事実があきらかになっていくのだが……。

アメリカのゲイ解放運動の結果として、ゲイに関する本も多く出版された。その中でも、この著者の本は人気があるようだ。それは、物語のストーリ性のおもしろさと、物語に出てくる人々の生きざまがそれぞれの立場の人に共感を呼ぶからであろう。

今回の本でも読み進めていく内に、弁護士りオス、その親友ラリーの生き方は切なくなるほど矜持に満ちているよう思えた。

エイズに冒されて余命いくばくもない時、自分にではなく他人に対して親切になれるのか。

弁護士という枠を越えて、事件の解決に向けて努力出来るのか。
 
推理小説としてもおもしろいがそれ以上にエイズを取り上げたこの作品は、作者の社会的洞察や考えが盛り込まれ、ストーリーとしても醍醐味もある重いテーマの小説である。





ゲイ・ミステリー版ハードボイルド

『このささやかな眠り』/マイケル ナーヴァ

このささやかな眠り (創元推理文庫)このささやかな眠り (創元推理文庫)
(1992/09)
マイケル ナーヴァ

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出会いは7月最後の朝。麻薬がらみの罪状が示すとおり、彼はどこか憔悴感を漂わせていた。だが、瞳に宿る真摯な光がわたしを捉えた。わたしたちは運命のようにささやかな交情を持ったが、季節が秋にうつる頃、ひとつの別れがわたしを待っていた。己れの愛と矜持を賭けて闘うゲイでヒスパニックの弁護士リオス。

ゲイ・ミステリ版『長いお別れ』と評される現代ハードボイルドの傑作なのですが、中身はというと、いたって逸脱のない生真面目なミステリです。

まだまだ今と較べると世間が同性愛に対してオープンに接していなかった時代に世に送り出された本作。

この時代にはカミングアウトする事によって失うものが多かったのかも知れないけど、弁護士リオスは自分がゲイという事もカミングアウトしています。頭の堅い人達にはゲイという部分だけを取り上げられて本当の彼を見る事をしてもらえないけど、ほとんどの人は彼がゲイという事を受け入れて普通に接しています。

運命のように出会い愛し合った薬物中毒者のヒューが変死した事によって彼は事件に巻き込まれていきます。

事件の背景を調べて行くうちにヒューの正体、そして彼の死を望む者の存在、さらに莫大なお金など謎が謎をよんでいきます。

同時死亡の法則など難しい法律用語が登場して少し頭を悩ますけど、基本的には堅苦しくなくスムーズに読めます。

人間の命よりもお金の方が価値があると思ってる人がいてるのは寂しいですね。

主人公の弁護士ヘンリー・リオスは人生に疲弊しながらも疲弊におぼれず、愛した、という混じりけのない思いを胸に戦ってゆく。韜晦や躊躇や建前を隅に追いやって、弁護士としての彼なりのやり方で愛に報いようとする姿勢は複雑でありながらまっすぐな不思議な主人公で、私は好きですよ。ぼんぼんで弁護士のもと恋人や美形の刺客、なぞのモテモテ感など、ゆるゆるの要素をあいだに挟みつつも、語り口はとても真っ当なところに着地するキャラクター。

ミステリとしては少々つまらないかもしれないが、ハードボイルドとしては素晴しいデビュー作だと思うし、これから先、ゲイという部分がこのシリーズでどういかされるのか楽しみです。









■ ■ 読 書 後 記 ■ ■ 

今、いちばんの注目はゲイの探偵もの。

海外ノベルズの世界でもゲイを取り上げた作品が流行。

ミステリーの世界でも例にもれずゲイものの小説がいくつかあります。

上記で紹介したジョゼフ・ハンセンは、デビッド・ブランドステッターというゲイの主人公が活躍するシリーズでその世界を築いた第一人者です。

全12シリーズを完結したハンセンに続く作家として注目を浴びたのが『ゴールデン・ボーイ』がヒットしたマイケル・ナーヴァです。

エイズを取り上げたこの作品は、作者の社会的洞察や考えが盛り込まれ、ストーリーとしても醍醐味もある一冊。

同ナーヴァの『このささやかな眠り』も高い評価を得ている必読の書です。