ミステリーがいっぱい!(その6)映画の原作の3冊 | *音 楽 画 廊 2*

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■謎解き+αのユーモアミステリーの世界へ、ようこそ・・・!

ミステリー小説の90%は恋愛小説。

登場人物はあこがれの街に住み、料理の達人だったり愛犬家だったり。

そんなディテールの面白さと魅力的な登場人物、ときにおかしくて、ときにスリリングな謎解きが一体となったミステリー小説の楽しさを体験してみて!?

さて今回は、映画の原作の3冊。



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span style="color:#660000">ミステリー小説が好きになるきっかけのひとつは映画。

主演が好きな俳優だったり、話題作だったり、きっかけはどうあれ、観たい映画がおもしろいミステリーなら、原作本もお勧め。

細かいディテールが異なっていたり、結末が変わっていたり、映画とは違うストーリーが展開します。

たった1本の映画が原作本の興味へとあなたを刺激しちゃうかもしれない王道な原作の3作。



『同居人求む』/ジョン ラッツ

同居人求む (ハヤカワ・ミステリ文庫)同居人求む (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/12)
ジョン ラッツ

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サイコ・サスペンス『ルームメイト』の原作本。

「当方、独身白人女性、同居人求む」―アリが出した新聞広告に応じて現われたのは、控えめで気の弱そうな女だった。まさかそのヒドラが、恐るべき狂気を内に秘めていようとは。アパートに越してきたヒドラは、やがてアリとそっくりの服を身につけるようになり、さらに…。

ニューヨークを舞台に、大都会の日常に潜む恐怖を描く傑作サイコ・サスペンス。

まさに「読み出したら、とまらない小説を書く」という作者の狙いが見事に実現されている小説である。

精神的にも自立した女性主人公が、知らないうちにじわじわと追い詰められていく様子は「静かに進行する怖さ」を際立たせた。

アリがじょじょに追い詰められていくあたりがサイコ・サスペンスとして派手さが無い分リアルでおもしろかった。

都会で起こりうる日常の恐怖というものがうまく描かれているので最初から最後まで、細部にまで気をつけて一気に読んで欲しい一冊。






『太陽がいっぱい』/パトリシア ハイスミス

太陽がいっぱい (河出文庫)太陽がいっぱい (河出文庫)
(1993/08)
パトリシア ハイスミス

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息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへと旅立った。息子のディッキーに羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。

精致で冷徹な心理描写により、映画『太陽がいっぱい』の感動が蘇るハイスミスの出世作だがアランドロン主演の映画と原作は結末は別。みしろ1999年にハリウッドがオールスター・キャストでリメイクした『リプリー』の方が原作に忠実だ。

謎解きのプロットといった推理小説の肝の部分よりも、なんか、主人公に愛着を覚えて、その小説を好きになってしまうことがある。

この『太陽がいっぱい』は、言うまでもなくアラン・ドロンの超有名な傑作の原作であるけれども、あの映画の中で全く割愛されている人物が出てくる。つまり、主人公トムがずっと、友達でい続ける、小さなものに彫刻する彫刻家の女性だ。米粒のようなものに、何かを描いたりする。

その彼女との友情が、実は一番トムを癒しているのではないと思う。その女性との、程よい距離を保った金粉のように貴重な友情が、この不幸なトムの人生の中で、唯一の救いに見えて、この小説をいつまでも忘れない愛着を感じる存在にしている。

同性愛者で貧しい育ちの若者リプリーがなりすました、傲慢で裕福なディッキーは、絶えず正体がバレることの恐怖と戦いながら、言葉巧みにスレスレで危機をかわしていく。ディッキーを演じている時も、リプリーに戻った時も、周囲からの疑惑に眼差しに晒されながら、「talented」な悪知恵でどうにか切り抜ける。

嘘がバレないようにまた嘘をついて、蟻地獄に嵌っていくような静かな恐怖。

嘘は必ず破綻して周りから蔑まれることがわかっている。

それなのに嘘を続けなくてはいけない恐怖。

この作品に掌にじっとり汗がしみでるような焦燥感をおぼえるのは、そのような日常の感覚の延長線上に、さり気なく人間の本質に迫ったシニカルに描かれた殺人事件だったからだと思われる。

まったくもって見事な筆力だと感服する。

そして物語の展開に始終ハラハラドキドキさせられる、こんなミステリーはちょっと他に類を見ない作品である。




『法律事務所』/ジョン グリシャム

法律事務所 (小学館文庫)法律事務所 (小学館文庫)
(2003/02)
ジョン グリシャム

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作者は法廷ミステリーの第一人者。いまや初版250万部とされるアメリカ最高の人気作家、ジョン・グリシャムの名を世に知らしめた傑作。

苦学の末、ハーバード大学ロースクールを優秀な成績で卒業した野心満々の青年、ミッチ。彼が就職したメンフィスの名門法律事務所は、過酷な労働の対価として、破格の待遇を用意する。恋人とともにバラ色の人生を予感するミッチだが、名門法律事務所の背後には暗黒の世界が広がっていた。

トム・クルーズ主演の映画「ザ・ファーム」は十数年前にロードショーで観たものの、グリシャムの原作は、読もう読もうと思いながら先送りになっていた。下手をすると三冊分位の分量のはずが、まったく中だるみしないで一気に読めた。

登場人物は映画とほぼ同じだが、物語の展開は少し違う。

映画以上にアクション、サスペンス度が強烈されており、映画化作品より映画的なアクション小説でありました。

そして読者を飽きさせないグリシャムの力量を充分感じさせました。

構成、登場人物の設定、スリリングなストーリーなどどれも秀逸だが、とくに気になったのは、間と間をつなぐ何気ない情景の描写力。グリシャムは、スタインベックを愛読していたと何かで読んだことがありましたが、まさに
スタインベック流の描写力だと感じた。

またエンディングはハッピーエンドと言えるのでしょうが,はたして本当にこれが幸福と言えるのだろうかと考えてしまいましたね。

映画は映画で面白いが、ストーリーは異なるので、すでに映画を観てしまっている人にもお勧めの小説です。






■ ■ 読 書 後 記 ■ ■ 

映画は与えられた世界だけど、小説は自分のいろんなイメージを広げて楽しめる世界。

好きな作品が見つかったら同じ作家の別作品を辿ってみるのも手。

読み進むうちに、同じティストの作家に興味が広がり、読書に幅が・・・。

そして、いつの間にかあなたもミステリーの仲間入りです。