賃貸の原状回復トラブル

春は入学や就職、転職のシーズン、長年暮ら

した家を離れる人も少なくないだろう。

賃貸住宅を退去する際、あまりに高額な修繕

費用を求められたら要注意だ。

 

「賃貸住宅の原状回復トラブル」に関する

相談は、今年度だけで既に公的窓口に1万件

以上寄せられている。

 

勘違いしやすいケースを把握しておこう。

 

修繕費用に疑問

東京都の女性会社員は昨年、賃貸マンション

を退去し、家族で引っ越した。

 

マンションの貸主(大家)に立ち退くことを

伝えると、修繕費用の見積もりが送られて

きたが、計上額は約37万円。

2DK(約55㎡)全ての壁紙の貼り替え費用

約13万円も含まれていた。

 

暮らしたのは約12年。

 

女性の前には7年ほど別の住人が暮らして

いた。

 

寝室の壁には子どもが落書きをし、女性が

それを拭き取った跡は一部にあったが、経年

変化によるとみられる色落ちもあった。

「すべての部屋の壁紙の貼り替え費用も見積

もりに含まれていた事に納得できず、おかしい

と思った」

という女性は、国土交通省の

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

で確認した。

 

すると、日照などによる壁の変色は経年変化

として、借り主(入居者)が原状回復義務を

負う事はないほうに分類されていた。

 

一方、落書きなどの行為による毀損は借主が

原状回復費用を負担する方に分類されていた。

 

女性は、このガイドラインの内容と見積もり

への疑問を記したメールを貸主側に送付。

結果、壁紙の費用負担は約13万円から

約7000円に減額されたと言う。

 

相談は1万件超

「入居時から傷ついていたなどの原状回復

 を求められた」や

「玄関の壁紙の僅かな傷で全面の貼り替え

 費用を請求された」

など、国民生活センターや全国の消費生活

センターなどに寄せられる

 

「賃貸住宅の原状回復トラブル」

 

の相談は後を絶たない。

 

和6年度の相談件数は3月10日時点で

1万1531件に上る。

 

昨年12月、不動産・住宅情報サイトの

運営会社が、5年以内に賃貸住宅からの

引っ越しを経験した1075人に行った調査

でも、51.6%が退去費用に納得できない、

と答えた。

同時に

「冷蔵庫設置による壁の電気焼け」

など、退去時に修繕が生じる項目の修繕

費用は借り主と貸主どちらになるかを

聞くと、勘違いが多かったのは、

貸主負担になる項目では

「壁ポスターを張った画びょうなどの穴」、

借り主負担になる項目では

「専用庭の雑草処理」

となった。

不具合早く報告

仲介業者も大家さんも賃貸業を営むプロ。

 

肩を並べて交渉し、退去時に費用をなる

べく抑えたいのであれば、借り主も最低限

の知識を蓄えておく必要がある。

 

退去費用をめぐるトラブルを最小限にする

ために、居住中からできる対策がある。

 

例えば、きちんと閉めても、窓の隙間から

雨が吹き込んで来るなど、建具の不具合が

ある場合は、大した事ではなくても早めに

貸主に相談しておくべきである。

 

また、新たに賃貸借契約を結ぶ際には、

書類の「特約事項」をしっかりと確認し、

疑問に思うことが書かれていないかを

確かめることも大切である。

 

さまざまな例を把握して納得できる

交渉につなげたい。