「宮澤賢治 雨ニモマケズという祈り」です。
いわゆる文学者や史学者ではなく
作家やエッセイストが宮澤賢治の輪郭を追う
コンセプトで作られた一冊です。
おそらく、東日本大震災前から企画があった
本なのではないかと推察いたします。
まことに残念なことに、震災によって内容が
歪になってしまった感じを受けました。
本書のメインテーマは、これまでストイックであると考えられてきた
賢治の周囲にあった女性関係にスポットを当てて
新事実を一般向けに知らしめることであろうと思います。
賢治とその女性とが交わしたとおぼしき「何か」と、
それが賢治の作品に及ぼした影響を考察しており
決して覗き見趣味で書かれたものではありません。
その部分はとても興味深く読みました。
一方で、宮澤賢治の郷土愛については広く人口に膾炙しており
いまこの時期に賢治を扱おうと思えば、
先の震災に触れざるを得ません。
本書の当初の想定にはなかったと考えられるそれは
賢治の作品や賢治の人生と、大きな自然災害との関係を
じっくりしっかり考察しているとは言い難く
かなり上滑りしている印象を持ちました。
本来であれば、それだけで一冊二冊の本が書けるところを、
メインテーマから離れているために通り一遍の触れ方になってしまい、
しかし無視するわけにもいかないという板ばさみが
本書から感じるいびつさなのであろうと思います。
bk1 → http://www.bk1.jp/product/03429266
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