別に困る必要はないんですが。
瀬尾まいこ氏の久し振りの小説は、
帯の惹句「爆笑コメディー」とはとても思えませんでした。
ほんわかほわほわと心温まる家族小説です。
最初は、家を出ようとする兄と、それに反発する弟という
面倒くさい設定から、若干難儀だなぁと思っていたのですが、
読み進めるうちにグイグイ引きこまれて、
あっという間に読み終わってしまいました。
実に、面白い。
困ってしまった理由は、直前に読んだ
五十嵐貴久「For You」との比較からです。
「For You」のエントリでは、語られるべきところが
語られていないのではないか、という疑問を呈しました。
実は、本作品でも似たような印象を受けたのですが、
それでも不自然でなく、とても素直に読めたのです。
理由は簡単で、この作品の主人公である
戸村ヘイスケ、コウスケ兄弟と似た経験を、
私がしたことがあるからなのです。
読書に対する感想が、読者固有の体験でしかなく、
それも読者の経験によって左右されるものであることは
明確に理解しておったつもりでしたが、
ここまであからさまになってしまうとは!
やっぱり、「For You」は読み手である私に問題があったのか…。
とまれ、本作は私の琴線に触れる素晴らしい小説でした。
早くも次回作が待ち遠しいです。
続編でもいいですよ。瀬尾先生。
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