正直なところを申し上げれば、地味だなというのが
読了直後の印象でした。
これは仕方のないことであって、すでに織田信長の優勢が
明らかになってから現れた、戦国末期の人物というのは
信長、秀吉、家康のいずれかに仕えていない限り
歴史の傍系となってしまうのが運命。
上杉謙信の衣鉢を継ぎ、越後を中心とした九十余万石から、
秀吉の世に会津百二十万石と、戦国に覇を競った大大名が、
家康の謀略によって最後は米沢三十万石。
エンターテイメントとして読んだ時、どうしても華々しさに
欠けてしまうのは致し方ないところ。
もちろん、著者が描きたかった物語が単純なエンタメでないからこその
直江兼続なのであって、兼続の目指した「義」や「愛」といった言葉によって
表されるナニモノカが、本作品では充分に語られています。
派手さはないですが、読める歴史小説であることは間違いありません。
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