環境問題はなぜウソがまかり通るのか | 雑読日記

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読んだ本の感想など

まず最初に申し上げておきますが、
私は環境問題の専門家でないことはもちろんのこと、
これらについて特別な勉強をしたこともありません。

ただの、しがない文系エンジニアです。
従いまして、以下に述べる内容には重大な間違いや
誤解が含まれている可能性があることをご承知いただいた上で、
お読みくださいますよう、よろしくお願いいたします。

本書は、名古屋大学大学院教授による、
「環境問題」に対する批判書です。

まず、最初に思ったことは、
「久し振りにヒドイ本に出会ったなぁ」ということでした。

個人的に一番ヒドイと思ったのは第1章で、
これは「ペットボトルをリサイクルしてはいけない」という
趣旨の文章です。

この中で著者は、平成5年から平成16年までのペットボトルの
消費量、回収量、再利用量の折れ線グラフを示して、

 「分別回収量が増える」につれて「販売量もウナギ登りに増える」
 結果となった。
 (本書13ページからの引用)

とのたまっており、前後の文章まで含めて、
まるでリサイクルを始めたせいで
ペットボトルの販売量が増えたような言い方をしています。

普通に考えたらここは、
「販売量が増えたから回収量が増えた」のではないですか?
原因と結果が逆だと思われます。

それから、

 ペットボトルをリサイクルするようになり、平成5年から16年にかけて
 資源(石油)は約7倍も使い、ペットボトルの消費量もペットボトルの
 形をしたごみも約4倍になり、全部のゴミを計算するとおよそ7倍になった。
 (本書23ページからの引用)

とも書いてあります。

前述の折れ線グラフを見ると、確かにペットボトルの消費量は
平成5年から16年にかけて約4倍になっていますが、
その間に確実に「減っているもの」があるはずです。

と言えば、どなたでもお分かりいただけると思いますが、「缶」のことです。

ペットボトルにまつわる資源の消費やゴミの増加を語るならば、
同時に、いまや缶コーヒーや酒類以外にお目にかかる機会の極端に減った
アルミ缶やスチール缶についての言及がなければ、
正確に資源やゴミの問題を語ることは出来ないと思います。

それとも、今なお缶飲料は平成5年並に消費され続け、
ペットボトル飲料市場だけが約4倍に急成長を遂げたのでしょうか。
そんなバカな。

次に第2章は、内容と言うよりも文章が面白い。

「ダイオキシンは猛毒ではない」という趣旨の文章なのですが、
その論文自体は東大医学部教授の書かれたものであり、
内容に興味を持ちました。

そして、この章の中では以下のような文章が書かれているのです。

 ダイオキシンの毒性が弱いということを理解するためのダメ押しに、
 焼鳥屋のオヤジさんの話をしたい。

 鳥肉に塩をよくかけて焼くと、ちょうど400度~500度になる。
 鶏肉(原文ママ)、塩、火という3条件が揃っているので煙の中には
 ダイオキシンが含まれていると考えられる。
 (本書85ページより引用)

え?
「ダメ押し」なのに、「考えられる」なんですか?

つまり、読者は科学的なデータの検証や、
論理の理解はできないだろうから、著者の書いた小話でも読んで
物事を理解しろってことですか?

このあたりで私は、本書は書籍一冊をまるまる用いた、
壮大な「釣り」なのではないかという疑問が
ふつふつと湧いてきました。

この後も第3章、第4章、第5章と話は続くのですが、
もう面倒くさくなったので止めます。

後半からは、最も印象に残った一言のみを。
第3章と第5章で、地球温暖化について述べられているのですが、
その中に、

 石油がなくなれば、人類は二酸化炭素を大量生成できなくなるので、
 地球を温暖化する手段を失う。
 (本書200ページより引用)

という強烈な一文がありました。

あー、なるほど。
銀行から借り、消費者金融から借り、親から借り、
友人知人から借り、闇金から借り尽くせば、
もう誰も金を貸してくれないからこれ以上貧乏にはならない、
ということですね。

とても面白いジョークだと思いました。

この記事に続きます。
→ 環境問題はなぜウソがまかり通るのか2

武田 邦彦
環境問題はなぜウソがまかり通るのか