初めて書店で見かけた時は、そのタイトルと表紙から
勝手に大河物ではないかと期待したのですが、違いました。(笑)
ある町の、小高い丘の上に立つ樹齢千年のくすの木。
その木を中心とした物語が、それぞれ二つの時代を
交互に描く形式で綴られてゆきます。
粒揃いですが、白眉は「バァバの石段」でしょうか。
現代における孫娘と、戦中の祖母の恋物語が交互に語られますが、
現代の主人公である孫娘の誤解が、
誤解のままひそやかなエンディング迎えるところに
ちょっとしんみりしました。
いずこかの時代の、いずれの場所にもあった
小さな人生の切り口を垣間見ることの出来る作品です。

荻原浩 「千年樹」 集英社 1680円
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