雑読日記

雑読日記

読んだ本の感想など

 
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高田郁「あきない世傳 金と銀」の
シリーズ11作目となります、風待ち篇です。
いや、もう風は吹いている!

長く続いた苦難の時を経て、前巻あたりから
逆転の機運を感じていましたが、
ついに雌伏を破って立ち上がる時が来ました。

「三方よし」の教えを体現するために
自分たちだけが儲けるのではない道を探す
主人公・幸に共感する人も多いのでは。

しかし、それは単なる利他ではないようにも
私には感じました。両替商・日本橋音羽屋という
本来であれば太刀打ちできない豪商を敵にして、
なんとか打ち勝っていくための方法にも思えます。

「三方よし」の教えにも、商人自身の「よし」が
含まれているように、自分を大切にすることも
忘れずに考えることが大事と読みました。
塩田武士「崩壊」です。
地方都市の市議会議長殺人事件を追う
刑事たちを主人公にした警察ミステリです。

いわゆる謎解きを主題にした本格と呼ばれる
ジャンルではなく、人間ドラマで読ませるタイプ。

もとからミステリはあまり読まないですが、
読書量が減った昨今はなおさら。
そんな中で読んだ本作ですが、結構面白かった。

シンプルですが、しっかり話が進んでる感がある
というのが案外大きい要素のような気がします。

読書量が減った分は映像フィクションを
見たりもしてるのですが、どこに進んでるか
はっきり分からないような作品も多くて
モヤモヤすることも結構あるんですよね。

その点、事件が起きて、それを解決して、という
ミステリというジャンルは、筋立てが明解で
迷うことがないのも美点なんだなと
改めて気付きました。いまさらですが。
小路幸也「ストレンジャー・イン・パラダイス」です。
架空の地方集落を舞台にした、
いわゆる村おこし物小説となります。

ほぼ限界集落、とも言えるような集落「晴太多」。
さまざまな事情もありつつ、Uターンも含めて
地元出身者が村おこしを目指して、
手始めにIT企業のサテライトを誘致した、
という所から話はスタートします。

その後、ウルトラセブンがバイクに乗って
ウロウロしたり(もちろんコスプレ)など、
ちょっとした事件を積み重ねつつ
どうやって運動を盛り上げていくかが綴られます。

小路作品らしく、善良な登場人物たちの
善良な物語として安心して読めますが、
本作の方向性だともっと波乱が欲しい気もしますね。
読みどころが掴みにくかったです。
ロックバンド、クリープハイプのボーカルである
尾崎世界観の日記風エッセイとなります。
「苦汁100% 濃縮還元」です。

本編では2016年終盤から2017年序盤の
日記が綴られており、これはこれで面白い。
私はちょうど2016年くらいから
クリープハイプを聴き始めましたので。

しかし、なんと言っても胸を抉るのは
あとがきに替えて収められた
2020年2月の日記でしょう。

ちょうど新型コロナの流行が問題となり、
音楽イベントが次々中止延期になる中で、
ツアー中だったクリープハイプにも
決断しなければいけない時が来ます。

大仰ではなく、ただただ悲しさや虚しさの中で
そうせざるを得ない状況に追い込まれる。
そんな様子が見て取れて何とも言えない気持ちに。

この禍難が終わってから、次の新しい毎日も
日記にして欲しいな、読みたいなと思いました。
高田在子の「まんぷく旅籠朝日屋」シリーズ、
二作目の「なんきん餡と三角卵焼き」です。

ワケアリの従業員を集めた旅籠・朝日屋を
舞台にした時代小説となります。
前作でメインメンバーが一通り揃って、
今回は登場人物も安定、話も安定してきました。

いわゆる人情物のエピソードが揃っていて、
個人的には第三話の小さな日輪が良かったです。
現代でもまだ存在するであろう家庭の問題を
描いているように感じます。

これまだ続いてるんですかね。
本巻ラストで終わりでもおかしくない気もします。