腹部をタテに走る腹直筋は、前後を腹直筋鞘に包まれています(前葉・後葉)。腹直筋鞘は腹直筋を包む扁平な腱膜で、側腹筋(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)の停止腱膜が正中線近くで癒合して作られます。ただ、この腹直筋鞘は、腹直筋の上部から下部まで同じように腹直筋を包んでいるのではなく、弓状線というラインを境に腹直筋鞘の後葉がなくなるため、これより下方では腹直筋の後面は容易に腹腔に達することができます。

弓状線についてもう少し詳しく見ていきましょう。弓状線は臍(おへそ)と恥骨結合の中間点の位置にあり、腹直筋鞘の後葉の下縁が弓状になったもので、明瞭に認められます。この線を境に、下方には後葉はなくなります。

弓状線よりも上の腹直筋鞘の構造です。
前葉の最表層には外腹斜筋の腱膜があります。

外腹斜筋より深部には内腹斜筋の腱膜があり、この腱膜は腹直筋の前面と後面の両方を包んでいます。つまり、内腹斜筋の腱膜は前葉と後葉の両方の構成に関わります。

内腹斜筋の深部には腹横筋の腱膜があり、後葉の構成に関わります。


腹横筋の深部には横筋筋膜があり、この深部には腹膜があります。



次に、弓状線よりも下の腹直筋鞘の構造です。
前葉の最表層には外腹斜筋の腱膜があります。

外腹斜筋の深部には内腹斜筋の腱膜があり、これも前葉を構成します。

内腹斜筋の深部には腹横筋の腱膜があり、これも前葉を構成します。

腹直筋の後面には側腹筋の腱膜はなく、横筋筋膜のみ位置します。つまり、深部には腹膜が接するため、容易に腹腔に到達することができます。


【まとめ】
●弓状線より上
  前葉→表層から外腹斜筋、内腹斜筋
  後葉→表層から内腹斜筋、腹横筋
●弓状線より下
  前葉→表層から外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋
  後葉→なし