これは宝の山ですかね・・お荷物じゃない!“閉鎖保養所”は宝の山…期待の再生ビジネス

企業の保養所を一般客も利用できる旅館にリニューアルした「四季倶楽部 京都加茂川荘」の和室(四季リゾーツ提供)
【ビジネスの裏側】

役所やNTTなど保有施設っていっぱいあるはず・・ここの再生をしたら 結構高齢化で 癒しと結構びじねすになるのでは>>?
 業績悪化に苦しむ関西電力が、経営効率化のため社員向け保養所の全廃を決めた。関電に限らず、経営難の企業は赤字の保養所を相次いで閉鎖している。その一方、保養所を一般観光客が低料金で利用できる宿泊施設に再生させるビジネスが急成長している。「お荷物」になった保養所を有効活用したい企業にとって、「救世主」になるか-。

なぜ?電力社員に「値下げ」待望論 電気料金と賃金のビミョーな関係

 関電は4月からの電気料金値上げに伴い、平成25~27年度の間、年間平均1553億円のコストをカットする。その一環で、保養所「須磨クラブ」(神戸市須磨区)と「あかぐり崎クラブ」(福井県おおい町)の閉鎖を決定。関電の保養所はゼロになる。

 「夏休みに子供を連れて行ったなあ…」

 須磨クラブを利用した管理職の男性は感慨深げにため息をついた。神戸の須磨海岸のすぐ近くで、テニスコートも完備。家族サービスに適した環境だけに閉鎖を惜しむ声はある。

 一方、レジャーの多様化などを受け、保養所を使わない社員は増加の一途だ。実際「保養所があったとは知らなかった」と驚く若手社員もいる。

 両保養所の23年度の収支は、運営費・維持費計7500万円に対し、利用料収入は計1200万円。差し引き6300万円の赤字では、保養所が「お荷物」と呼ばれても仕方がないだろう。

 一方、閉鎖が決まった豪華な保養所に目を付け、有効活用で「宝の山」に化けさせるというビジネスの動きが活発だ。

 三菱地所の社内ベンチャー制度を活用して平成13年に創業し、20年に独立した「四季リゾーツ」(横浜市)は、利用状況が悪い保養所の運営を受託し、観光客らに開放するビジネス「四季倶楽部」を展開。1人1泊朝食付きで5250円という一律の低料金で、箱根、軽井沢など全国に34の施設を展開している。

 近畿の「四季倶楽部 京都加茂川荘」(京都市北区)は地下鉄の駅から徒歩2分。瀟洒(しょうしゃ)な和風の建物は7年に完成。和室や大浴場のほか、地中に埋めた甕(かめ)に落ちる水滴の音を楽しむ音響装置「水琴窟」まであり、麻雀ルームも完備。

 これらの設備をオーナー企業から引き継ぎ、21年9月に旅館として再スタートさせた。業績は上々で、保養所時代に約4割だった客室稼働率は約7割にアップした。

 利用料収入は四季リゾーツが丸々受け取り、オーナー企業は一銭ももらえないが、四季リゾーツの山中直樹社長は「当社が運営・維持費を賄うので、企業側の負担が減る」と解説する。

 電力料金の引き上げで厳しい世間の目にさらされる関電の関係者は「保養所の今後は関係各所と協議中だ」とするが、施設を眠らせず運営を委託するという手段は検討に値するのではないか。

 「四季倶楽部」の事業は行政からも注目されている。

 神戸市が六甲山・摩耶山活性化に向け、民間事業者からアイデアを募る事業では、保養所などを一般旅行者に開放する同社の提案が候補に入っている。実現可能と判断されれば、25年度から3カ年の活性化プロジェクトとして、市から助成や規制緩和などの支援を受けられる。

 ただ、このビジネスは、無条件でおいしいというわけではない。

 山中社長は「六甲は箱根や軽井沢などに比べ、豪華な保養所が少ないこと、道路整備が十分でないことから、慎重に進めないといけない」とシビアに見る。

 実際、六甲と並ぶ関西の保養地、和歌山・南紀白浜についても、委託の問い合わせがあるというが、「アクセスが悪すぎる」と、さらに厳しい。「地域にリゾート地として浮揚する余地があるとは思えない。話を持ち込まれることは少なくないが、お断りしている」と打ち明ける。

 施設が豪華なだけではダメ、地名が有名なだけでもダメ。利便性やリゾートとしての将来性などの前提がそろわなければ、ビジネスにはならない。保養所が再生され生き残るためには、厳しい条件をクリアしなければならないようだ。(宇野貴文)