保険料を引き上げる必要も指摘している。意見書は、将来の保険料率の上限を、月収の二〇%以内から三〇%以内とする複数案を示した。年金審で先送りされた問題は、基礎年金の財源問題であった。未加入者らも含めると、現在すでに、全体の三割以上が保険料を納めていない状態に陥っている。こうした状況を踏まえて、保険料負担を抑えるため、現在三分の一となっている基礎年金の国庫負担の比率を二分の一へ引き上げることが議論された。また、基礎年金の財源を保険料ではなく税金で集めるという「税方式化」も論議された(しかし、意見書では、「現実的には極めて困難」とされた)。


これらにより、二〇二五年時点の年金支出総額は、現行制度を続けた場合より二割程度抑えられるという。基礎年金の国庫負担率については、「二〇〇四年までに、安定した財源を確保して二分の一への引き上げを図る」と国民年金法の付則に盛り込むこととした。二分の一への引き上げには、約二・二兆円の財源が必要となる。「安定財源の確保」というのは、消費税率の引き上げを意味している。


このため、今後の保険料引き上げは、いくつかの場合を分け、計三通りを示すという暫定的なものになった。具体的には、二〇二五年度時点の厚生年金保険料率が、月収の二七・六%、二五・二%、二七・一%(いずれも労使折半)となっている。また、未納・未加入者が全体の三割をこえている国民年金の「空洞化」対策として、二〇〇〇年度から学生の保険料は一〇年後までの追納を認め、二〇〇二年度から一定の所得に達しない人には保険料を半額免除するかおり、給付も三分の二とする制度を導入することとした。


政府・自民党は、年金改正法案を三月にまとめた。しかし、連立を組む自由党の反対があり、国会に提出できずにいた。ようやく七月になってから、合意ができた。成立は、九九年の秋になるとみられる。年金改正法案では、支出の抑制策を打ち出している。これで二〇二五年でも、厚生年金の保険料率は二五%、国民年金の保険料は一万八〇〇〇円に抑えられるとしている。懸案となっていた基礎年金の財源については、「二〇〇四年までの間に安定した財源を確保しようとしている。


国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げる」こととされた。なお、年金の制度改革問題は、これですべて決着したわけではない。今回の年金改革法案でも、全額税方式化を検討すべきことが明記された。また、経済界を中心に、厚生年金の民営化の議論も高まっている。こうした抜本的改革も必要だろう。さらに、財源を消費税とすべきか否か、資産保有者への給付をどうするか、といった問題もある。本章では、以下、こうした問題について議論することとしよう。