米銀は自己資本比率の向上をめざして、資産サイドの圧縮に出たのである。そしてこの動きの一環として、米銀は国内市場だけではなく、ユーロ市場においても放出資金の回収に出てきたのである。これが国際間資金フローにおいて、銀行部門を経由する短期資本収支を大幅に改善させ、FRBによる大型の金融緩和下でドルの堅調を惹起させることになった。


米銀によるユーロ市場での大幅な資金回収は、実は、九〇年からの再統一を反映したドイツの銀行によるユーロ市場からの資金回収と時期的に重なったため、国際間の資金フローに対し相当の収縮圧力をかけることになった。このため、米国とドイツ以外の国(主に日本とドイツ以外の欧州諸国)に対するユーロ市場を経由した国際間資金フローの圧縮作用が、こうした国のハイーパワード・マネーに減少効果を与えることになった。


これが米国とドイツ以外の国の国内流動性に対し相当の抑制効果を発揮したのは当然であった。一方、米国において信用収縮を引き起こした原因の一つであるBIS規制は、何も米銀だけに適用されるわけではなく、他国の銀行にも同様に適用されている。このことは、米国やドイツ以外の国も、自己資本比率を高くするため、ユーロ市場で資金回収に出るか、または新たな資金の放出を抑制する動きに出ることになった。これによって、銀行部門経由の流動性創出が主要国間で相乗作用を起こしつつ、同時に困難化することになった。


このように、日本やドイツ以外の欧州各国には、国際間資金フローの変化を反映した信用収縮圧力と、BIS規制への対応という、国内流動性への二重の低下圧力が作用する。これらは、FRBの金融政策の変更が米国及び他国の流動性の変動を規定するといった、戦後の国際通貨システムの運営メカニズムが、基本的な部分において機能不全となってきたことを意味するのである。