順番を守れ
駅のホーム、混みあう八百屋。
あらゆるところで人を押しのけて前へ行こうとする人がいる。
そんな時私はそいつの襟首を掴んで冷静にひとこと。
「順番守らんかいボケしばくぞオラ」
・・すいません、嘘をつきました。
そんな話ではありませんでした。
私の父しげるの話は過去二回書きましたが、
しげるの妻すなわち私の母ヒロ子の話でした。
ヒロ子はしげるより6歳年下。
小さい頃は「むっつむつまじいと言って6歳違いは相性がいいんだ」という
ノロケなのか何だかわからない話をいつも聞かされた。
近頃よれよれしてきたしげるに比べて、
ヒロ子は6つも下のせいか、またスポーツクラブで基礎体力をつけているせいか、
まだまだ元気で口うるさい母だ。
孫(私の姪)も、そのうるささに辟易して
「うるさいな、トリ子は」とよく言ってたっけ(ヒロ子はトリ年)
そんなトリ・・ヒロ子は年をとってよりうるさくなり、
しげるにもいちいち「ほらご飯こぼした」「さっさと歩きなさい」などと
もう聞いている方もうんざりするほどのコケコッコーぶり。
小さいころからお父さん子の私にはそれがたまらず、
「私のお父さんをもっと大事にしてよ!」なんて苦情を申し立てたことも。
でもまあ母も色々大変なんだろうと思い、
また最近体の調子を悪くして落ち込んでるとのことから、
たまには気晴らしさせてあげようと、
野球好きの母のためにチケットを取った。
そのことを話したら、一瞬「行けるかな・・?」とためらいを見せた母は
それでも好きな野球のことなので、体調を整えて楽しみにしているねと言った。
東京ドーム、クライマックスシリーズ。
巨人×阪神。黄金のカード。
仕事を終えて急ぎ足で水道橋駅に着いた私は、
待ち合わせの改札を出たところにしゃがみこんでいる小さな老人を見つけた。
・・ヒロ子だ!
少し会わないうちに小さく弱ってしまった母がそこに居た。
「ほら!私なんかこんなに足があがるんだから。お父さんしっかりしなさいよ!」
と父を叱咤していた母はそこにはなかった。
立って待っていることもできない。
さっさと歩くこともできない。
ドームへ向かう橋を少しずつ歩みを進める母に私は愕然とした。
なんと・・・
父ばかりマークしていたので、母はまったくノーマークだった。
もしかしたら父より早く母の方が逝ってしまうのでは?
そんな恐れを抱いた。
そして心の中でつぶやいた。
おかあさん、
それは順番違うよ。お父さん看取るんでしょ。
順番守ってね。
その時、思い出した事がある。
自分が大きな病気にかかった時、
親より先に逝くのは最大の親不幸とわかりながら、
小さいころから寂しがり屋で
反抗の限りを尽くしながら人一倍家族を意識して生きていた自分は
このまま、親や親族に見守られて逝くのもいいなと思った時があった。
寂しがり屋の自分には、それが一番幸せな去り方だと。
なんつー自分勝手。
なんつー思いやりのなさ。
とぼとぼ歩くヒロ子、
GIANTSのタオルを買って喜ぶヒロ子。
人工芝に目を細めながら試合に見いるヒロ子。
そんな母を見ながら、心の中で自分自身に向かって叫んだ。
順番を守れ、自分。
順番を決して間違うなよ、おまえ。
GIANTSはボロ負けしたけれど、母は楽しそうだった。
これからは父の様子だけではなく、母の様子もたまには伺おう。
そして少しくらい口うるささが戻っても
それは元気な証拠だと思おう。
そして姪っこたちと笑おう
「トリ子はうるさいな~」と。
あらゆるところで人を押しのけて前へ行こうとする人がいる。
そんな時私はそいつの襟首を掴んで冷静にひとこと。
「順番守らんかいボケしばくぞオラ」
・・すいません、嘘をつきました。
そんな話ではありませんでした。
私の父しげるの話は過去二回書きましたが、
しげるの妻すなわち私の母ヒロ子の話でした。
ヒロ子はしげるより6歳年下。
小さい頃は「むっつむつまじいと言って6歳違いは相性がいいんだ」という
ノロケなのか何だかわからない話をいつも聞かされた。
近頃よれよれしてきたしげるに比べて、
ヒロ子は6つも下のせいか、またスポーツクラブで基礎体力をつけているせいか、
まだまだ元気で口うるさい母だ。
孫(私の姪)も、そのうるささに辟易して
「うるさいな、トリ子は」とよく言ってたっけ(ヒロ子はトリ年)
そんなトリ・・ヒロ子は年をとってよりうるさくなり、
しげるにもいちいち「ほらご飯こぼした」「さっさと歩きなさい」などと
もう聞いている方もうんざりするほどのコケコッコーぶり。
小さいころからお父さん子の私にはそれがたまらず、
「私のお父さんをもっと大事にしてよ!」なんて苦情を申し立てたことも。
でもまあ母も色々大変なんだろうと思い、
また最近体の調子を悪くして落ち込んでるとのことから、
たまには気晴らしさせてあげようと、
野球好きの母のためにチケットを取った。
そのことを話したら、一瞬「行けるかな・・?」とためらいを見せた母は
それでも好きな野球のことなので、体調を整えて楽しみにしているねと言った。
東京ドーム、クライマックスシリーズ。
巨人×阪神。黄金のカード。
仕事を終えて急ぎ足で水道橋駅に着いた私は、
待ち合わせの改札を出たところにしゃがみこんでいる小さな老人を見つけた。
・・ヒロ子だ!
少し会わないうちに小さく弱ってしまった母がそこに居た。
「ほら!私なんかこんなに足があがるんだから。お父さんしっかりしなさいよ!」
と父を叱咤していた母はそこにはなかった。
立って待っていることもできない。
さっさと歩くこともできない。
ドームへ向かう橋を少しずつ歩みを進める母に私は愕然とした。
なんと・・・
父ばかりマークしていたので、母はまったくノーマークだった。
もしかしたら父より早く母の方が逝ってしまうのでは?
そんな恐れを抱いた。
そして心の中でつぶやいた。
おかあさん、
それは順番違うよ。お父さん看取るんでしょ。
順番守ってね。
その時、思い出した事がある。
自分が大きな病気にかかった時、
親より先に逝くのは最大の親不幸とわかりながら、
小さいころから寂しがり屋で
反抗の限りを尽くしながら人一倍家族を意識して生きていた自分は
このまま、親や親族に見守られて逝くのもいいなと思った時があった。
寂しがり屋の自分には、それが一番幸せな去り方だと。
なんつー自分勝手。
なんつー思いやりのなさ。
とぼとぼ歩くヒロ子、
GIANTSのタオルを買って喜ぶヒロ子。
人工芝に目を細めながら試合に見いるヒロ子。
そんな母を見ながら、心の中で自分自身に向かって叫んだ。
順番を守れ、自分。
順番を決して間違うなよ、おまえ。
GIANTSはボロ負けしたけれど、母は楽しそうだった。
これからは父の様子だけではなく、母の様子もたまには伺おう。
そして少しくらい口うるささが戻っても
それは元気な証拠だと思おう。
そして姪っこたちと笑おう
「トリ子はうるさいな~」と。