このシリーズの7回目に書きましたが、鰻重の材料であるウナギは蒲焼にされる寸前まで生きている。高級店であればあるほどそうです。中にはお客さんの前で捌かれるウナギもいる。

私は丹波さんほど冥界に詳しくありませんが、霊魂は極楽や地獄にいく前にしばらくこの世に留まっているらしい。やはり名残り惜しいんでしょうね。

ということは、蒲焼となってアツアツのご飯に乗せられたウナギの霊魂はまだそこいらを彷徨っていることになる。

鰻重の出前を注文すると、オカモチのあとをウナギの霊魂もフラフラと付いてくる。そんなことは露知らず、棋士の方はいそいそと鰻重の蓋をあける。途端、あたりには美味そうな匂いが立ちのぼる。

それをウナギの霊魂は天井のどこかから見ている。匂いの元には変わり果てた我が身。さらに、肝吸いのお碗の中では大事な大事な自分の肝が緑の三つ葉のそばでゆらゆら。

おのれ~~~。にっくき棋士め。呪ってやる~~~~。

と、まぁ。こんな経過を辿って鰻重を食べた棋士はウナギの呪いにかかる。ウナギに祟られる。だから鰻重を食べた棋士の勝率は悪い。

なんて冗談を長々とシリーズにして書いていると、そのうち鰻屋さんから商売の邪魔だと言われかねません。そこで今日の記事を最終回にすることにしました。くれぐれも皆さん、この記事は冗談だということをお忘れないように。

最後にご報告をひとつ。鰻重の呪いや祟りなんて存在しない証拠に、11月19日に行われたリコー女流王座戦の第3局で、加藤桃子奨励会1級は昼食に鰻重とアイスレモンティーを注文。見事に清水市代6段を撃破しております。

加藤一二三9段から加藤桃子1級へと受け継がれた鰻重注文の伝統。その行く末をいつまでも末永く見守りたいと思います。(完)