5.危機一髪


水着の女子高生や女子大生と砂浜でアバンチュールを楽しむ計画が儚く消えた僕たちは、ここで2班に分かれる。海釣り班と大島探検班です。

高校の同級生組の僕とGとSは海釣りを選んだ。女が連れなきゃ魚だ。民宿で釣り竿を借り、道の端にあった売店で餌を買い求め、売店の人が釣れると断言した岩場を目指す。

無垢な乙女が何も知らぬげに、罪もなく 、足を開いたような風情がある
下の写真の上の端の辺り。


ちょうど乙女の膝に当たる部分。そこが僕たちの目指した場所だった。

鯛やヒラメをどしどし釣って夕食は豪華な舟盛りで一杯。のつもりで臨んだ海釣りでしたが、結論から言うとサッパリだった。後で聞いた話ですが、魚がちょうど海外旅行中だったらしい。

アルキメデスは自分に支点をくれれば地球を動かしてみせると言ったそうですが、彼に私の釣り竿を持たしてやりたかった。しょっちゅう地球に引っかかってましたから、いくらでも地球を釣り上げられた。

2時間ほど磯にいたんですが誰ひとり魚に対面できない。まだガンバルと意地をはるSだけを残して僕とGは乙女が浜に引き上げた。海釣りがあんなに腕のくたびれるものだとは知らなかった。

JKもJDもいない乙女が浜には貸しボートがあった。ほかに乗るもんがないんだからボートに乗るしかない。大島探検隊が戻るのを待って、僕らは勇躍、太平洋に乗り出した。僕とG、TとTの弟の4人です。

晴れ。微風。追い風2.2メートルくらい。陸の上なら世界記録を狙うには絶好のコンディションだ。だが僕らのボートは乙女の膝を目指してのんびりと進んでいく。ひとり岩場に残ったSを激励するためです。

まったく釣れてくれない魚への怒りと敵愾心に燃えるSは、海の上から手を振る僕らには目もくれず、レンタルした釣り竿を大きく振りかぶり、錘のついた糸を頭上で大きく2度3度と回転させたあと、さっと海に向かって投げ入れた。

このときのSの視線の方向と僕らのボートの向きはほぼ平行の関係にあった。ユークリッド幾何学では絶対に交わらない関係です。

と。

Sの釣り竿がまっすぐ視線の方向に振り下ろされてから0.764秒後。僕の左耳のあたりの空気が軽く震えたかと思うと、ズボッと不気味な音がして何かが海に飛び込んだ。

ボートの上の4人は一斉に音がした方向を見る。そこには夏の光を浴びてキラキラと光る釣り糸が一本。
釣り糸の先を辿ると、海面から約1メートルのところで糸は僕の偏光サングラスの左のツルに引っ掛かり、さらに先を辿ると糸は約50メートル先の岩場にいるSの釣り竿と交わっていた。

いやぁゾッとしました。長さ7~8センチ、太さは大人の親指くらい。ずしりと重い錘が空中を飛んできて僕のコメカミからわずか1センチくらいのところを通過していったんですから。弾丸が飛んできたようなもんです。直撃していたら即死してたかもしれない。[続く]

by 70rock