2.
僕ら6人とその他大勢を乗せた船は大海原を白波を蹴立てて走る。走る。
船に乗ってから約8時間。僕たちは海の果てに沈んでいく夕陽を言葉もなく見つめていた。
というのはまったくの冗談で、船はけちくさい桟橋を離れると25分でなんの感動もないまま大島についた。これが東京の大島なら紺絣の着物をきたアンコ椿のオンナのコが迎えに出てるはずなんですが。
誰にも歓迎されず着いた島ですが、改めてネットで調べてみると、当時青春真っ只中にいた僕ら6人が訪れた気仙沼大島というところは、実は世界に冠たる?リゾート地だったらしい。
ネットの記述;
気仙沼大島 - 気仙沼湾に浮かぶ自然豊かな大島 潮騒に包まれたリゾートアイランド. ... 気仙沼湾から旅客船で25分。周囲約22kmの東北地方では最大の有人島(
気仙沼大島
まぁ。写真で見る限りでは確かに緑の真珠と表現できなくもない。
しかし、見ると聞くとは大違いというコトバがありますが、写真で見るのと自分の目で見るのも大きく違いますな。いやなに。いい島だったということです。
3.
島に着いた僕たちは、あらかじめ手配してあった民宿に向かった。お目当ての住所を探し当てて着いた先は、門構えも立派な大きな屋敷。ほう、これなら旅館並みじゃないか。美味い喰いもんにもありつけそうだ。ひとまずヨカッタ。僕らは胸をなで下ろした。
それから5分後。期待は木っ端みじんに打ち砕かれる。
玄関で応対した女将は、中の部屋に招きいれてくれると思いきや、下駄をつっかけて僕たちを門の外に案内していく。
ほう、離れが民宿になってるわけか。なるほど。そのほうが好都合かもしれん。
なにに好都合なのか。無敵の若さを誇った僕らの胸のうちで期待だけがいたずらに膨らんでいく。
ここなんですよ。女将が案内してくれた場所は、一目、大きな倉庫みたいなところだった。山の中の分校の講堂のようでもある。
下の写真の向かって右半分のような所でした。
向かって左とドコがどう違うんだ?
そう思った方にご説明しますと、
右と左の違いです。
天井はあくまで高く、安普請の窓ガラスが嵌まった四面の壁に囲まれた空間は
あくまでガランとしていて殺風景。バレーボールのコートが2面は取れそうな広い床の一隅に荷物を下ろした僕たちはトホホの思いで座り込んだ。[続く]