2.
運命の大一番を前に、
「うーん。これはすごい気合が入ったんじゃないですかぁ」
鈴木環那初段の問いに、
「そうですね。気合は入りましたけど、
色々なことは考えないで、
この1局に集中しよう、全力を出し切りたいなと思っていました」
と答える佐々木君。
「なんかこう緊張とかしました?」
「そうですね。相当追い込まれてるというか、精神的にもそういう面がありました」
うーん。無理もないなぁ。
小さい頃から天才と呼ばれてきて、まわりの期待も重圧になるだろうし。
「意外ですね、これ。16才というところで勢いに乗って、
先輩たちの中でも勝ってるわけじゃないですか。
すこし気持ちに余裕があるのかなと思いきや、
まったくそうではなく追い込まれていた。
それで前夜というのは寝れました?」
環那さんが聞くと、
「はぁ。寝るのは得意なんです。はい」
と佐々木勇気君。
大一番を前にぐっすり寝られたとは。大物だ。
声や顔は高校1年だが肝っ玉は大人も顔負けじゃないか。
いいぞ。佐々木君。(続く)