(37)

2007年6月14日

今週の火曜日、スペクター被告の最初の弁護人チームにいたサラ・キャプラン弁護士が証人席に坐った。

検察側によれば、彼女は2003年2月3日の事件の翌日、弁護団チームに雇われた法医学の権威、ヘンリー・ リー博士が事件現場から何かを採取して持ち去るのを見たと捜査官に語ったという。

リー博士はそんな事実はないと証言しているため、検察側はキャプラン弁護士を証人として召還したが、彼女は依頼人の権利を守るためだとして目に涙を浮かべながら証言を拒否した。

これに怒ったフィドラー判事はキャプラー弁護士に対し、証言しないなら法廷侮辱罪で刑務所に収監すると警告した。

「今日すぐに収監はしない。自分の決定が正しいかを控訴審で裁決してもらうために1週間の猶予を与える」とフィドラー判事。「本法廷はリー博士の証言の信頼性を確認する権利を有する」

「彼女がやろうとしていること、やり抜こうとしていることは称賛に値するかもしれない。だが、それが本法廷で証言を拒否する十分な理由になるとは思わない」とフィドラー判事は語った。

依頼人の権利は証拠の破壊には適用されない。また、キャプラン弁護士はすでに2回の予審でリー博士が何か採取したのを見たと証言しており、これは権利の放棄に当たる。これがフィドラー判事が法廷侮辱罪を言い渡した根拠だ。

キャプラン弁護士は刑事事件の弁護士として25年のキャリヤと名声を持ち、ビバリーヒルズの豪邸に住んでいる。




(38)

2007年6月25日

検察側はこの日、法医学捜査のトップ、リンネ・ヘロルドを再び証人に呼んだ。

彼女は先週の公判で、ラナ・クラークソンが口を撃たれたとき、被告スペクターはクラークソンから3フィート以内の位置に両手を上げて立っていた可能性が高いと証言した。

それも被害者の前に立っていたのではなく、歩くか走り寄るかしたはずだ、と。




これは検察側のシナリオに沿った証言でもある。

ただし、1年以上も証拠を吟味してきたが、スペクターが銃を発射したかは特定できなかったと彼女は語った。さらに、銃撃の際にクラークソンの手がどの位置にあったかも分からないという。

スペクターの弁護団のリンダ弁護士は反対尋問で、「あなたの報告書のどこかに、凶器のリボルバー、コブラの引き金を引いたのがスペクターだという確率はどの程度かを明言した箇所がありますか?」と聞くと、「いいえ。ありません」と証人は答えた。




2日間にわたる反対尋問の最後に、リンダ弁護士はスペクターとラナ・クラークソンの衣服に着いていた血しぶきに焦点を絞った反対尋問を行なった。

銃撃の際にスペクターはラナ・クラークソンから3フィート以内の近い位置にいた。そう推定される根拠として、ヘロルド証人は被告スペクターの白いジャケットに着いていた血しぶきの量と広がり方を挙げた。

これに対し、リンダ弁護士は沢山の技術的な質問を証人に浴びせた。その際に彼女は、先週の公判で検事がやったように、両手を上げて銃を持った格好で証人席に歩み寄るというパフォーマンスまで披露した。

「被告はこんな風にクラークソンに歩み寄った。あなたはそう仰るんですね。血しぶきから推定して?」迫るリンダ弁護士に、「ええ、その可能性が高いと思います」と証人は答えた。

「でも」とリンダ弁護士は続けた。「口中を撃って自殺した場合、血しぶきが6フィート以上も飛ぶケースがあるという別の研究者のレポートがあります」リンダ弁護士が言うと、「今回の事件をほかと比べることはできません。それぞれのケースに特異性がありますから」と証人は答えた。

(39)

2007年7月12日

スペクターの最初の弁護団にいたサラ・キャプランは公判での証言を拒否していたが、法廷侮辱罪で監獄行きだと脅され、ついに陪審員の前で証言することを承知した。

フィドラー判事から宣告された法廷侮辱罪を控訴審に持ち込んだものの拒否され、彼女も態度を変えざるをえなくなったようだ。

予審では、同じ弁護チームにいた法医学者のリー博士がなにか白い物を小瓶に入れるのを見たと証言しているが、公判では一転して依頼人の権利と合衆国憲法の解釈を楯に証言を拒否していた。

ラナ・クラークソンの遺体の検死写真をよく見ると、彼女の右の親指のアクリル製の付け爪が剥がれている。検察側はリー博士が持ち帰った白い物はこの爪の破片だと主張。これは口に銃を入れられたときにラナが抵抗したことを示す重要な証拠だとしている。

リー博士は事件現場からそのような物を収集してはいないと公判で証言したが、フィドラー判事はキャプラン弁護士の証言のほうが信用性が高いと判断。キャプラン弁護士に公判での証言を求めたが拒否されていた。

リー博士は出張で中国に行っており、共同通信の電話取材に対して今のところ公判で再証言するつもりはないと語った。「とにかく私は爪など拾っていない。これだけは断言しておく」とリー博士は言う。